第2話 赤い血と緑色の血
私は赤い血を口から垂らして、狂気に浸っていた。赤い血はいつ口にしても美味しい。足元に転がる人間たちの死体は醜い。でも、私の前では食糧でしかない。しばらく死体にむしゃぶりつく私。もっと、もっと、もっとだ。お腹をいっぱいにさせろ。次第に血肉の匂いは辺りに満ち始めた。
背後で物音がした。私は振り返る。大きなゴーレムがそびえ立っていた。いつみてもデカイな。拳が飛んできて私はとっさによけた。そして剣で背中を切りつける。少し刃が欠けたようだ。このデカイのは魔法じゃないと倒せないらしい。私は森に逃げて行く。はるかうしろでゴーレムはどしんどしんと足音を鳴らしていた。
欠けた剣を眺める。あいつがくれた剣。形見のようなものだ。大事にしなくてはならない。木によじ登って遠くを見つめる。山、川、森、人間の村。この世界は静かであるが、時に残酷な一面をみせる。私は知っている。我々、ゴブリンは人間に殺されることを。だが、私は今日も人間を殺してやった。二つの思考が対立する。一つは人間を生かすこと。もう一つは憎い人間を根こそぎ殺すこと。どちらも理想でしかない。行き着くのはそれだ。
私を生かしてくれたのはあいつのおかげ。私は地獄を見た。でも、もういい。今ではあの人のために生きることを決めたから。あの人間の愛は私が確かに知っている。それだけで充分なのに、なぜ私は戦うのか。人間からも嫌われ、同じゴブリンからも憎まれ、私はあの時に殺されるべきだった。そうすれば、私はいつまでも愛と言うものを知らずに済んだ。
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