バーテンダーが給仕中に耳にするのは、三人の航宙士が語る百物語。
バーの片隅で語られる“宇宙”は、静かで悍ましく、美しくも不気味。
8話完結のSFホラーです。
レビューのひとこと紹介のとおりです。
そこまで知識のない私でも、目に浮かぶほど、鮮やかに宇宙が描写されています。
惑星丸ごと頭に浮かぶんです。
まろやかに青い星。表層には白や金の筋が複雑に伸び、目玉のような斑がある。そんな瑪瑙玉のような丸い惑星が、黒い宇宙のなかに浮かんでいる――。
凄まじく美しく、濃密で、読んだあと、(すごい映像だったな)と思うんです。
絵ないのに。
そしてその巧みな描写で書かれる物語の見事なことといったらないです。
あっという間に飲み込まれます。
実際に百物語が語られている98話、99話、100話、そのどれもに人の胸を突くものがあります。
だいたいこういうのって、好きになる話・そうでもない話とか出てくるじゃないですか……?
ないんですよ……。どれも全く異なる話であるのに、そのどれもが大変素晴らしいんです……。
読みやすい構成で、おまけに8話完結済みですし、
このレビューで興味を持った方はぜひ読んでみてください!!!
世の中でSFと相性の良いものといえば、ファンタジーの次にホラーもあげられます。
SFホラーといえば、「エイリアン」に見られるようなモンスター・パニック物が大多数。
クトゥルフ神話などもモンスター物といえばそうでしょう。
しかしこの「航宙士夜話」では、舞台こそ宇宙の片隅ではあるものの、百物語の系譜が連綿と受け継がれている様子。宇宙世紀の時代にも、いまだ不可解な出来事は人々の噂の中に、時に面白おかしく、そして当事者たちにとっては笑い話ではないよう。
また、行われている百物語にも何か理由があるようで……。
SF小説にありがちな専門用語等も少ないので、読んでいる途中に立ち止まることもありませんでした。
(設定の)少し変わった百物語の物語として読み応えがあります。
9/30追記
最終話まで読了しました。
丁寧な筆致で描かれた宇宙の怪談を楽しむことができました。
時代が変わり、舞台が変わっても、怪異の只中にいるのはやはり人間なのでしょう。