虚構は虚構だからこそ、楽しい。

この宇宙に存在する銀河のひとつひとつに、管理者(アド)のいる世界……。銀河間同士の干渉は、本来、より上位の管理者(ヘッド)によって禁止されていた。
ある銀河”箱庭”の管理者は、地球で亡くなる人間の中に、異世界への転生を望む者が多いことに気づく。退屈していたアドは、彼らを自分の世界に受け入れ、利用して楽しむことを思いつく。すなわち、彼らにとって不衛生で不便な”箱庭”で、チート級の能力を与えてクリーチャー達と戦わせた後、能力を奪い、貶めるのだ。

ヘッドの仲間のエネルギー体(ドル)と(マズ)を宿した日本人の響と能は、「異世界のリアル」を伝え、地球の転生希望者を減らそうと試みるがーー。


現実社会への皮肉を含むファンタジーです。終始、ニヤニヤしながら拝読しました。いやあ、面白いですね!
異世界ファンタジーもの流行ですが、実際の中世や化け物が徘徊する世界なんて、現代日本人には不便で危険なばかり…。そこで、転生した自分だけが神に優遇されて活躍できるなんて、都合のいい空想に過ぎません。
虚構は虚構を楽しむべきで、現実社会に生きる者は、個人の力は小さくても、そこで出来ることを積み上げていくしかないのですよね……歴史上、人々がそうして来たように。
そんなことを考えさせてくれる作品でした。
秀逸な諷刺であり、娯楽「小説」と思います。流石です。

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