第4話 準備期間
王宮。会議室。宗介はアルビノを連れて会議に参加していた。
一部の重臣などはアルビノの参加を嫌がったが、それならば自分も参加しないと言い張り、宗介はアルビノの同席を強引に認めさせた。
重臣たちの美辞麗句を聞き流し、宗介に話が振られたところで宗介はやっと口を開く。
「まず聞きたいんだが、この戦争の勝利目的は何処だ? ブラウが撤退するまで防戦するのか、ブラウを追い返して適当なところで講和条約を結ぶのか? あるいはブラウを追い返して追撃し、ブラウを徹底的に攻め滅ぼすのか。それが決まっていないと俺としても動くに動けない。諸兄の意見を求める」
傲岸不遜に言い放った宗介の言葉に、重臣たちは喧々諤々と論議を戦わせる。とは言え1と3はあり得ない。選択するならある程度痛み分けたところでブラウと講話をするのが常道だろう。そう思っていた時期が宗介にもありました。
なんと驚くべきことに、この国の連中は徹底抗戦を叫んだのであった。宗介は小さく悪態をつくと「ならばお前たちの次男坊までを俺の直轄とする軍に入れるように」と命じた。
曲がりなりにも貴族の次男は長男に何かあったときのスペア。おいそれと軍隊に差し出して良いものではない。当然反対の声が上がるが、宗介の「ならばブラウに滅ぼされるか?」という脅しには逆らいにくい。
「それと、軍隊の訓練を見たい。できれば演習レベルのものを」
と宗介は要望する。この国、ひいてはこの世界の軍事技術がどの程度のものか把握しなければ勇者としてこの国を救ってやることもできない。そう考えてのことだった。
「承知しました。演習をご覧に入れましょう」
そう答えたのは、この国の国王だった。
ブラウの軍が近くにいないことを確認してから演習を行ったが、結果としては散々だった。
騎士と魔法使いと歩兵とマスケット兵が混在した軍隊。異なる兵科を混在させて運用するお粗末な軍事レベルだった。これなら某北の国にも負ける。
仕方がないので急拵えで軍事改革を行った。
まずは兵科ごとに部隊を分ける。10人で1小隊とし、それを基礎にして中隊、大隊、連隊と部隊を作っていく。クラースヌイは小国のため、一つの兵科だと最大でも連隊規模までしか部隊を編成できなかった。
そして魔法使いに他世界通信機の応用した通信用の魔法機器を作らせ、小隊長に装備させる。最終的には全兵士に装備させるのが目標だが、今は時間がないので隊長クラスだけに装備させるにとどまった。
ここまでで約一ヶ月。日本とクラースヌイを往復しながら、軍備を整えてきた。
ブラウは前回の市街戦の傷が癒えないのか、再び攻めてくることはなかった。だが、宗介はそろそろ攻めてくる頃合いだと考えていた。何しろ相手は大国。一ヶ月もあれば再軍備はできるはずだからだ。
「市街地戦は拙いな・・・・・・」
クラースヌイで与えられた私室で、宗介はつぶやく。
「副官、副官。地図を持ってきてくれ」
魔法通信機で副官を呼び出すと、しばらくして赤毛で背の高い優男が地図を持って現れた。
「ソウスケ様、地図をお持ちしました」
「ありがとう、グラフィス」
ちなみに宗介が初めてグラフィスと会ったときの第一印象は、死亡フラグが服を着ている。というものだった。
「さて副官、前回のように市街地戦になるのはあまり嬉しいことではない。そこで、できるだけ狭い場所で敵を迎え撃ちたいわけだが、どこか待ち伏せに適したところはないかな?」
宗介は地図を見ながら言う。
「ここは切り立った崖がありますので、最適ではないでしょうか?」
グラフィスが地図を指し示しながら質問に答える。
「実際に現場を見てみたいな。馬車の手配を」
「はい、ソウスケ様」
グラフィスは一礼すると、馬車の手配のために部屋を出ていったのだった。
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