生きるために戦わなければならなかった。草原の覇者の若かりし日のこと。

草原に生きる遊牧民は諸部に分かれ、相争っている。
ちょうどチンギス・カンが草原に覇を唱えるまでの、
モンゴル系諸部の凄惨な歴史が再来したかのように。

生きるための覚悟を、生まれながらに、強いられる。
そんなふうに見えるほど、彼らの日々は張り詰めて、
「漫然と」「呑気に」過ごせる瞬間など一時もない。

そうした環境の中でも、族長の跡目である少年たち、
ディオとジョクは案外伸びやかな素顔を見せもする。
二人を見守る年長のトゥグスのまなざしも、温かい。

戦争と策略に翻弄され、謎の病に滅びの予兆を覚え、
巡り来る厳しい冬を睨みながら、生き残る道を探す。
狼の血を引く若き戦士たちの物語。とても好きです。