職業は自宅警備員だがちゃんと定収もある。物納だが。

 その後、特段何かがあったというわけではない。

 いや、ひとつあった。

 畑を猪が荒らすことが幾度かあったので、猟銃の免許を取ることにした。

 実態として色々面倒くさいというか、ちょっとばかりお役所の拷問めいた迷宮のような様々もあったが、まぁそれでも猟銃の免許がないことには猪ばかりは対処ができないので必要だったし、冬になれば鹿も山から降りてくる。

 実のところ、過疎を受けまたやはり猟銃免許の扱いを巡って、極端に人材が減って高齢化と趣味化が進んでいて、まともな意味で猟をおこなえるものが減っていた影響でと、猟銃を持っている山が歩ける人材が希少ということらしく、猟師として地域から何やら期待を受けた連絡がおこなわれることが増えていた。

 といって、そう云う猟師にまともな賃金が支払われることは殆どない。

 物納と云うべき収入も殆どない。

 野生動物を店に卸して食べられるように処理するのは家畜と違ってかなり大変だ。

 はっきり言えば、苦労のほうが多い。

 呼ばれて出ていっても、空振りすることのほうが多い。

 公式の身分もない。

 まぁ要するに自宅警備員のままだ。

 だが、しかし、まぁ。

 職業は自宅警備員だがちゃんと定収もある。物納だが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

職業は自宅警備員だがちゃんと定収もある。物納だが。 小稲荷一照 @kynlkztr

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説