おわりラジオ

ヒノヒカリ

第1話 終わり


「プッ………ザー……ザー…ザーザー…」


ラジオから聞こえる音にユイは目を覚ました。

真っ暗の部屋で寝ぼけながら、ベッドの上に置いてあるラジオの電源を探す。


「んー。もうっ、何!?」


ユイは寝ぼけながら、ラジオをバンバンと叩いた。

それはCDもMDもカセットすら聞く機能の無い、古い年代物のラジオ。

去年の12才の誕生日の時押入れの奥から見つけてそれ以来デザインが

可愛いからと、何となく使っていた。


「ザー……ザー…もうすぐ最初の」

頭を掻きながらユイはふと気付いた。

「あれ……?あれ?」


「ラジオ周波数合って無いのに何で聞こえて…」


そこでユイは完全に目が覚めて急に怖くなった。


「……お母さーん」

ユイは一人が心細くなって、部屋を出て母を呼んだ。


その時だった。


ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン

低い、地面を這う、胸の奥に響く様な

息が止まりそうなくらいに大きくて恐ろしい音が聞こえた。


「えっ?は?何?」

胸に響く様な重低音にまた怖くなり、音が聞こえる窓の外を見た。


ドンッ…ゴゴゴゴゴっ!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


(お家が揺れてる!地震!?)


「ユイーーー!大丈夫か!?」

「お父さん!」

2つ隣の部屋にいた父の声がする。だけど、歩けない

揺れが大きくなってユイは立っている事も出来なかった。


「…ユイ!どこなの!ユイ!」

遠くから母の声が聞こえた。

声の方向から、母のいる場所は…キッチンだろうか?

「自分の部屋にいるよ!お母さん、怖いよ」


その時、また父の声がした。

「ユイ!動くな!今行くからな!」


地鳴りと部屋の揺れる音で両親の声もあまり聞こえない。

激しい揺れによって部屋の中のクローゼットが開き、お気に入りのワンピースや

スカートが映画のスローモーション映像の様に全部出て来た様にユイには見えた。


「ザー…ザー…ザー」

「ザー…準備…は良いですか?」


(え?ラジオから聞こえて来る…)

ユイはラジオから男性が何かを言っている事に気付いた。


「えーっ…ザー…行きたい人は」

「ザー…息を止めて下さいね」


(えっ?何?どこに行きたいって?)


「いきますよー。カウントダウン」

(何?何?カウント何?何?!息を止めれば良いの!?)

ゴゴゴゴゴゴっ!ゴゴゴ!

揺れは益々激しくなってきた。

「お母さん聞こえる!?ラジオが息を…止めろって!」

ユイは精一杯叫んだ。母に聞こえたか分からない。

極限状態の今は言われた通りにしないといけない。そう思った。

「ザー……ハイ!3 2 1」

「ゼロ!」


その後、キーンと耳鳴りが聞こえ

何かが強い光を放ち

辺りは一瞬真っ白になった。


その後、静寂が訪れた。


「ハイ、終わり」


「ザー……」


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