第4話 結(ユイ)
『こんにちは。あやのんです。』
「嘘!?聞こえた!?」
ポツポツ…ポツポツポツポツ
急に雨が降って来たが、全く気にせずユイはラジオをじっと見つめた。
こんなにラジオに集中するのは生まれて初めてだった。
『今日も沢山の方々がお亡くなりになっています。ご冥福をお祈りします』
何故だか悲しい内容なのに、いつもの優しい声を聞いて嬉しくなった。
ラジオが良く聞こえる方向へアンテナを向ける。まるで教室やデパートでスマホの電波を探している様だった。
「生きている人がいる!良かった…」
『9月14日今日の天気は晴れ、気持ちが良い天気ですね。』
「こっちは雨が降っているけど、放送局がある所は晴れなんだ…」
「遠いのかな…」
『昨日はまた大きな地震がありましたね。皆さん気を付けて下さい。今日も倒壊の恐れがある建物には近付かないで下さいね。』
「そうなんだ…嫌だな、怖い。」
ユイはラジオと会話している様だった
『ザザー…ザー……ガッ』
「あ、また電波が!嫌っ」
ユイは、またアンテナを強く握ったがラジオからは声は聞こえなくなった。
ふとラジオの側面に目をやると、今まで全然気付かなかったが、
番号が書かれたシールが貼ってあった。
番号が書いてあるシールには泥が付いていたが、強い雨が流してくれた。
「2」
「何だろう…この番号…」
ユイは少しシールを見つめたが、考えるのは辞めた。
ザー……
雨が強くなってきた。真っ黒な雨。
泥水を浴びている様な真っ黒な雨だった。ユイは我に返り、慌てて屋根になりそうな所に走った。
「ここは…リビングだった所かな…」
今自分が立っている場所で、3日前までは家族でご飯を食べていた事が
信じられなかった。
「お母さん…お父さん…ユイ寂しいよ。お腹空いた…指も痛いよ…」
ガサッ、カラカラ…カラ
体育座りして腕に頭を埋めていたユイの足元に石が転がって来た。
ふと顔を上げると自分と同じくらいの歳の女の子が立っていた。
髪はショート、目はクリっとした可愛い女の子だった。ボロボロのTシャツとフリフリのスカート、肩からは鞄みたいにラジオを掛けていた。
ユイは頭が真っ白になった。
「あなたはユイちゃんって言うの?」
「……えっ?」
その時地面が揺れ、大きな地震が来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます