祖父の代、山里に巣食う何か。

福井県の奥越で筆者に伝えられた怪奇譚である。

雪を呼ぶ雪起こし
生きた人魂が起こした道連れの怪。
山のものたちの領分を侵したがゆえの化かし話。
山の衆たちとの交流と意趣返しを描いた椀貸 膳貸の逸話。

迷信を信じない祖父が体験し、筆者の父に語った話にはたんたんと科学的な解釈が添えられており、幽霊の正体見たり枯れ尾花、と落着する。

が、果たしてそうだろうか。迷信を信じないからといって、迷信の根源がすべて科学的に説明がつくものなのか。

奥越の伝承がとつとつした方言で紡がれる。
語り部の口から直接うかがってみたいお話。

民俗学的な資料としては「椀貸 膳貸」をぜひとも一読されたい。

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