第6話
拳銃弾で撃たれた程度の傷であれば死ぬことのないマキーナ・トローブたちであるが、7.92mmの機銃弾で全身を貫かれてしまうと再生することはできないようだ。
黒い狼たちが皆殺しにされたのを見届けた百妃は、ティーガーの背後から歩み出る。
黄金の龍が地面に穿ったクレーターのほうへ、向かう。
既にそこには地に墜ちた黄金の龍はおらず、ニコライと名乗ったマキーナ・トロープが立っていた。
地面におちていたキャンバス地の布をマントのように身体へ纏ったニコライは、獣の笑みを口元へ浮かべている。
「あいにくとおれは、あんたらのアハト・アハトでも死ねないようだな」
熱で陽炎をおこしている機関銃の銃口を、ニコライへむけるティーガーを百妃は背中で制する。
そして、手に提げていた剣をひといきで鞘から抜いた。
武骨で肉厚の片刃剣が、闇を切り裂く真白き光を放ちながら出現する。
「大丈夫だ、問題ない」
セーラー服を着た少女は、薄く笑みをうかべながら武骨な片刃剣を青眼にかまえる。
「粟田口吉光、骨喰藤四郎か」
百妃は、少し苦笑する。
「よく知っているね」
ニコライは、上機嫌で笑う。
「術者の装備は、頭の中にインプットされているんだよ。確か、斬る様を見せただけでひとを殺せる伝説を持つらしいが」
ニコライの右手が金色の光を放ちながら、剣へと姿をかえてゆく。
「おれを斬ってみろよ。マキーナ・トロープに伝説が通用するものかやってみろ」
少女の瞳は、真冬のオリオンのように冷たく光った。
「マキーナ・トロープであろうと、ひとの形をしたものであればひとの理に縛られる。だからわたしは」
少女の紅い唇が、すっと歪む。
「斬ることができる」
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