第8話

ニコライの身体は四散し、徹甲榴弾は廃墟となったビルで爆炎をあげる。

ティーガーは、冬の空を思わせる青い瞳を昏い空へ向けた。

焔と煙が這い回る地上へ、灰が雪のように降り続けている。

「くるぞ、我が主よ」

ティーガーの言葉に、百妃は頷く。

「変化しろ、ティーガー。ここから脱出するぞ」

ティーガーは頷き、その全身が漆黒の光に包まれる。

地上へ墜ちた夜空のようなその暗黒から、戦車が出現した。

ティーガーIと呼ばれるその戦車は、マイバッハのV型12気筒エンジンに咆哮をあげさせながら地上へと出現する。

鋼鉄の巨大な虎は、無限軌道でアスファルトを砕き漆黒の光から這い出す。

ティーガーIは、獣が頭を掲げるように砲身をあげ百妃の前に止まる。

少女は、ひらりとその砲塔上部へのぼった。

「上からだ、我が主よ」

戦車の中にある無線装置から、ティーガーの声が響いてくる。

百妃は灰が降り続けている空へと、目を向けた。

二機の無人戦闘機が、鋼鉄の猛禽となってビルの谷間へ急降下してくる。

百妃は、金色の獣毛で覆われた左手で骨喰藤四郎を抜くと、無人戦闘機へ向かって一振りした。

凶暴な強さを持った剣の放つ光が、二機の無人戦闘機を襲う。

骨喰藤四郎は、戦闘機を斬っていた。

パウリ・エフェクトによってアビオニクスが死んだ戦闘機は制御不能となり、ティーガーの後ろへと墜落する。

ふたつの爆炎が、ビルの谷間に出現した。

一瞬あたりが真昼の明るさとなり、爆風が百妃の背をうつ。

少女の髪は、鬣のように風で逆巻く。

「パンツァー・フォー! ティーガー」

百妃の言葉とともに、マイバッハのエンジンが高らかに吠え、鋼鉄の虎は重厚な身体を前へとすすめる。

前進するティーガーIの行く手に、今度は大型の四足歩行ロボットが出現した。

象ぐらいサイズはありそうな四足歩行型戦闘ロボットは、上部にミサイルキャニスターを装備している。

対戦車ミサイルがそれぞれ六機づつ、格納されていた。

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