第9話

轟音が響き、六機のミサイルが一斉に発射される。

二体の四足歩行ロボットは爆炎に包まれ、十二本の焔でできた槍が向かってきた。

百妃は、骨喰藤四郎を一瞬抜き夜空で悽愴に輝く三日月の光を地上に放つ。

目に見えぬ力が呪となって、ミサイルを斬った。

パウリ・エフェクトが作動して、十二機のミサイルはコントロールを失う。

目標を見失った十二本の焔でできた槍は、ティーガーIと百妃の頭上を飛び去った。

遥か後方の廃墟となったビルがミサイルの直撃を受け、巨人の咆哮のような爆音が轟く。

鋼鉄の獣であるティーガーは背後でおこった爆発の光を背にうけ、夜の中で昏く浮かびあがる。

爆風と灰、そして真紅の花びらが舞うように火の粉が降り注ぐ中、無限軌道がアスファルトを砕きながらティーガーは前進した。

一方、ロボットたちも前進をはじめる。

頭部に装備されているバルカン砲を、至近距離で撃ち込むつもりなのだろう。

パウリ・エフェクトの射程はせいぜい10メートルといったところか。

パウリ・エフェクトの有効射程にはいる前に、バルカン砲を撃ち込むつもりらしい。

百妃は薄く笑うと、叫んだ。

「ティーガー、アハト・アハトを撃て」

ティーガーは、その場に停止した。

百妃は砲塔の下で、自動装填装置が作動し56口径8.8 cm弾が薬室へ送り込まれるのを感じ取る。

57トンの巨体が揺らぎ、徹甲榴弾が放たれた。

爆風が、百妃の顔をうち髪がなびく。

一体の四足歩行ロボットが、焔の矢に貫かれる。

次の瞬間、爆発がおこりあたりが真昼の明るさとなった。

一体の四足歩行ロボットが、焔に包まれながら膝を折り地面に沈んでいく。

百妃は、砲塔の下で56口径8.8 cm弾が排莢され、次弾が装填されたのを感じる。

しかし、もう一体のロボットはすぐ近くまできていた。

バルカンが激しい発射音を響かせ、ティーガーのまわりに着弾させていく。

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