第5話

街のあちこちで戦闘の名残りである黒煙があがっており、汚れた雪にもみえる灰が降り続けていた。

剣を手にした百妃の顔にも灰は降りそそいでいるが、百妃は気にする素振りもみせない。

目の前には、クレーター状に破壊された道路がある。

そこに金色の龍が横たわっており、灰色の雪がその金色の輝きを鈍らせていく。

黄金の龍は紅蓮の焔に蹂躙されており、さらに頭部を徹甲榴弾で破壊されていたが、それでもまだ動いていた。

つまり、まだ生きているようだ。

しかし、その身体は収縮をはじめている。

「マキーナ・フェノメノンが維持できなくなったわね」

百妃は、薄く微笑んだ。

突然、百妃たちの降り立った道路の両側に漆黒の狼たちが出現する。

マキーナ・フェノメノンを形成した、マキーナ・トロープたちであった。

夜の闇が切り抜かれたように黒い狼たちの身体は、子牛ほどの大きさがある。

その黒い狼たちが、刃のように鋭い牙を剥き出しにして迫っていた。

「ティーガー、マウザー・ヴェルケMG34だ」

左腕を戦車砲に変えたままのティーガーは、頷く。

今度はその右手が、漆黒の光に包まれる。

闇色の光は、暗黒星雲のようにティーガーの右手を覆った。

ティーガーは、その闇の中から機関銃を取り出す。

銃口は、ラッパ型マズルブースターの装備された独特の形状をしている。

それは、空冷用の穴が無数にあいている銃身ジャケットが取り付けられた、7.92mm口径の機関銃である。

百妃は、7.92mm口径の機関銃をかまえるティーガーの背中と自身の背をあわせた。

百妃を背にしたティーガーは、四方に向けて7.92mm弾を斉射した。

冷たい輝きを放つカートリッジが、道路へまき散らされていく。

鋭い焔の剣のような銃火が、銃口から発せられる。

漆黒の狼たちは、胴体を銃弾で切り刻まれていく。

マキーナ・トロープたちは、機銃弾に全身を破砕されティーガーの足元へ倒れていった。

その破壊された黒い身体にも、灰色の雪が降り積もってゆく。

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