第2話

おとこは、巨大なリボルバー、レッドホークを腰のホルスターへ戻す。

そして、無造作に歩き出した。

足元に、若いおとこの死体が転がっている。

454カスール弾で破壊された頭部が、ナノマシンによって再生されつつあった。

彼ら、マキーナ・トロープは死ぬことを許されない。

おそらくは、彼らを支配するRB(Re・designed humans・Brigade)が認めるまで。

おとこは、亡霊のようにゆらりと意志をなくした状態で立ち上がる若いおとこを見て、侮蔑するように口元を歪めると唾を吐き捨てた。

部屋を出ていこうとするおとこの周囲に、四足歩行型・アサルトロボットが集まってくる。

頭に相当する部分に、5.56ミリカービンを装備した自律稼働式ロボットは、おとこの周囲を警備しはじめた。

廊下に立っていた、M4カービン型の自動ライフルを持ったコンバットスーツのおとこが問いかける。

「お頭、どちらへ?」

「おれは、自分の部屋に戻る。おんなの死体を、処理しておけ」

コンバットスーツのおとこは、身近にいた相棒をつれ部屋の中へと向かう。

おとこは、金属の猟犬を思わせる四足歩行型・アサルトロボットをつれて廊下を歩いていった。

おとこの入った部屋は、重厚でアンティークな家具を備えたスウィートルームである。

そのスウィートルームのリビングに置かれている、革張りのソファへ腰を降ろした。

おとこに従っていた金属の猟犬たちは、おとこの四方を固める。

おとこはデスクに置かれた小箱から、シガリロを取り出すと口に咥えて火をつけた。

薄暗い部屋の中、紫煙が漂っていく。

煙を吐くおとこの側で、金属の猟犬たちは背中に装備されたセンサーのLEDライトを点滅させながら周囲を警戒し続ける。

それは、唐突におこった。

全てのアサルトロボットが機能を停止し、撃ち殺されたように床へ沈んでいく。

おとこは、何かが始まっていることを理解する。

おとこの表情から、不機嫌さが消えていた。

満面の笑みを讃えて、スウィートの奥にあるコネクティングルームから黒い人影が姿を現すのを見ている。

黒革のロングコートを纏った、長身のおとこが歩みだす。

金髪に整った顔立ちを持つ黒いロングコートのおとこは、死の大天使に見える。

「おまえか、おまえが」

おとこは野獣の瞳を闇の中で光らせ、歓喜の声で叫ぶ。

「おれの運命なのだな」

「おれは、ティーガーだ」

金髪に碧眼のおとこは、鋼のように冷たい声色で答える。

そのおとこの影から、ひとりの少女が姿を現した。

セーラー服姿の、少女である。

「あなたの運命は、このわたしよ。マキーナ・トロープ」

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