ひとりでに映像化されてゆく、作中描写の数々。俺の目を盗みやがったな‼
- ★★★ Excellent!!!
この作品は近未来的な世界観で特殊工作員として生きる女性「橘 菊花」の活躍を中心に描いた、本格SFアクション小説です。
……と言いつつ、物語序章に彼女の姿はありません。ハラハラのプロローグから月日が流れての本編で、ようやく主人公お出ましとなります。
「あれ⁉ プロローグに出てきた人たちはどこいったの⁉」とプチ混乱をきたすかもしれませんが、大丈夫。読み進めるにつれて、物語は全部、絡まった紐をほどくように、綺麗につながっていきます。
そして、本編に入っても目まぐるしく展開されていく逃避行ドラマと、手に汗握るバトルの連続……。
この物語の凄い所は、恐ろしいほどに練り込まれたプロット、舞台設定、登場人物のキャラクター造形の深さ……など多々ありますが、中でも個人的に凄まじかったのが、臨場感溢れる作中描写の濃さでした。
文章を読み進めている内、各シーンが勝手に眼前に浮かんでくるんです。ハードボイルド風な作品の展開も相まって、まるで本格的な洋画を映画館で鑑賞しているような気分になってしまいました。
特に圧倒されたのが、数々の戦闘シーン。緻密なんだけど、決してくどいと感じさせない描写の連続が、キャラクターたちのアクションを鮮明に浮かび上がらせてくれます。
いやはや、恐ろしい視界ハッキングの手際です。笑い女……じゃなくて、作者のすずめ女史。
作中ドラマの進み方も本場洋画に劣らぬスリルに満ち溢れており、「ぎゃー! キッカが危なーい‼」「一体誰が敵で誰が味方なんだ……」と、ひたすらドキドキさせられてしまいます。
と、思いきや、ちょこちょこと差し挟まれるキャラクターのやり取りにほっこりさせられたり、ニヤニヤさせられちゃったりもして……。「ううむ、笑い女め。エンターテインメントの作り方というものを、熟知しておられる……」と、感服しっぱなしでした。
本編終了後に番外編が充実しているのも、嬉しい限りですね! キャラクターたちのドラマをさらに掘り下げてくれて、大満足でした!
特にラストエピソードの締め方が見事すぎて、個人的には号泣でした。私の喜怒哀楽を、どれほど弄べば気が済むのだ、笑い女め……。
ホントにもう、ドキドキワクワクハラハラシクシクの連続攻撃で、読み終わった後には、謎の洋画熱が沸き上がって止まらなくなってしまいます。
とりあえず私はこれからレンタルショップに赴き、某ステイサムとかトム・クルーズのアクション洋画を借りてきて、この熱を鎮めたいと思います!