とりまく『死』の空間の中で、人は生に執着する

頭が良ければ、村上春樹とか太宰あたりの類似性を指摘しつついい感じの論評を投下したりするのですが、やめときます。
おもしろかった。
憧れていた先輩の『緩やかな死』。
現実世界へ漕ぎ出すという『死』。
2010年代の小説は、どちらかといえば希望の物語が多いように感じます。それは、この世の中に絶望が満ち満ちていて、そこから逃れたいからではないかと思います。
現実という一番の絶望から、目を背けずに書いたか、逃げたくて書いたかはまあ置いといて、もはや死の中に埋もれた美を共有する二人は非常に尊いと思いました。
SFから冒険小説、青春ものに異世界転生まで書いて、ようやくこの世界にたどり着いた筆者だからこそ書ける「深い絶望と失望の世界」。
案外、世の中に求められているのは、そういうものなのかもしれません。

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