雨に蓋されて、燻った煙草の匂いが新宿に閉ざされる。

たまたまかもしれないが、こういう作品をカクヨムで見かけることが少ない気がしたので、今回出会えたことは嬉しかった。
青臭いセンチメンタリズムの凝縮だが、私のような経歴の人間には刺さるしかなかった。

ところで、センチメントにも時代性がある。たとえばサルトルのそれと村上春樹のそれと椎名林檎のそれは、それぞれ異なっている。
そのセンチメントはしばしば失われたものへの郷愁や不能感と結びついており、その上で段階的な差異があり、その中では最近の鬱屈を表現しているように思われた。
内容はいまだ習作に留まっていると思うが、サルトル、三島由紀夫、村上春樹、椎名林檎というある種の退廃の経路を辿りながら、「三月の5日間」を書いた岡田利規の影に伴走している感じもあり、何かが終わったように見えて、これから始まるのだという予感を抱かせる内容だった。

クールではなくハイライトの湿気た匂いが漂う新宿のどん詰まった感じに浸り続けることができず、時の経過にやられていく様子の残酷な青臭さにはたまらないものがある。アイコスも、雨の日は不味いのだろうか。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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