まずつかみが強い。キャプションで説明される状況設定の段階から、「どうなるんだ!?」と引き込まれ、読み始めると一話二千文字そこそこで状況が動き、引きがあり、「どうなるんだ!?」が継続して読む手を止められなくなってしまう。
作者はなんとも巧みなエンターティナーであるなあと感心しながら読んで行くのだが、参加者が形成する派閥、ある組織の台頭、本性を現すやべーヤツなど二転三転する内に、ひときわ強い存在感を放っていた「彼」の真実が明らかにされ、物語の前提がひっくり返る……。いやあ、実にお見事。
サクラさんの台詞から、この世界にはまだまだヤバい超常存在がたくさんいるようですが、物語はデスゲームとその参加者のみに絞られていて、八万文字強のコンパクトさにまとめられているのも、サクッと読めて嬉しい所です。
なぜデスゲームに「クイズ」なのか? 「クイズ」の意義とは何か? と、その奥深さ・楽しさを解き明かしていく本作は、モチーフへの愛も感じられて好感触。とても素敵な物語でした。
早押しクイズ×人狼×デスゲーム×能力バトル。「心理戦」で結びついたこれらの要素が全て上手く機能しており、決して「題材負け」しない面白さを最後まで発揮してくれた。
マイナージャンル競技(クイズはバラエティ番組でお馴染みなのでマイナーとは言い難いかもしれないが、実際に遊んだ人は少ないはず)・そして選手へのリスペクトも感じられる。
そういった意味で、ライバルキャラ:Qのキャラ造形が本当に良いよな……と思った矢先、後半で更に株を上げていった。主人公:Aも同様で、やがて能動的にクイズに向き合っていく様が魅力的に見える。そう、二人とも真剣なのだ。
真剣さが理不尽に潰されてしまいがちな現代社会。でもフィクションの中くらい、真剣な者が最後に笑い、理不尽がぶっ飛ばされる世界であってほしい。結末を読み終えて数日経った今、そんな事をふと思う。