生と死の間で、記憶は巡る。

 これほど綺麗で切ない小説を、かつて読んだことがあるだろうか。「切なさ」や「悲しさ」という材料をいっしょくたにして、多くの読者の口に合うような温度で温めて、定番の「感動小説」をうたう小説がこの世には溢れている。
 けれど本作は、そういった意味の型にははまらない異色な小説である。「恋人の死」、「死後の世界」というありふれた設定が、「コインランドリー」という舞台において読者を魅力の渦に引き込む。そして文字通り写真のように切り取られた時間軸が、次の展開を期待させる。
 この物語がずっとつづけばいいのに、と願う気持ちで次話を読んでいた。でも物語にも、人生にもいつか終わりが来る。
 記憶を消してもう一度読みたい。そんな綺麗な作品でした。

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