コインランドリーで待ち合わせ

作者 村谷由香里

20

7人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

 これほど綺麗で切ない小説を、かつて読んだことがあるだろうか。「切なさ」や「悲しさ」という材料をいっしょくたにして、多くの読者の口に合うような温度で温めて、定番の「感動小説」をうたう小説がこの世には溢れている。
 けれど本作は、そういった意味の型にははまらない異色な小説である。「恋人の死」、「死後の世界」というありふれた設定が、「コインランドリー」という舞台において読者を魅力の渦に引き込む。そして文字通り写真のように切り取られた時間軸が、次の展開を期待させる。
 この物語がずっとつづけばいいのに、と願う気持ちで次話を読んでいた。でも物語にも、人生にもいつか終わりが来る。
 記憶を消してもう一度読みたい。そんな綺麗な作品でした。

★★★ Excellent!!!

ていねいに淡々と綴られるコインランドリーの風景と、そこにやってくる人々の過去がタピスリーのように重層にからみあって描き出される物語。甘酸っぱく、ほろ苦い。

派手なシーンはひとつもないのに、読んでいるうちに世界に取り込まれ、気がつくとコインランドリーをのぞき見ている自分がいました。

★★★ Excellent!!!

幼児の頃――――、寝小便をかいて、怒られた。母は私を怒鳴りつけなかった。むしろ、過去を懐かしみ――「しょうがないわね」なんて言いながら、物干し竿に、大きな染みを残したまま――干してくれた。わずかに頬がゆるむ、そんな母の顔――優しげな皺。――乾いて、早く乾いて。――そんな小さな願いなど、どこ吹く風。あの染みは、今でも、鮮やかな軌跡を残したまま――消えはしない――記憶を辿る――わずかな染みを残したまま、私の子供が――今度はそれを使う。今は――消えないで、消えないで――と大きな願いを、運んでくれるように、そう、神様にお願いするように。