第2話 二人で授業

「は~い、新しい席も決まったし、ホームルームは終わり。早速授業始めるわよ~」

(一時間目はキョウコ先生の英語だから、まぁのんびりとしよう)

「はい、教科書十五ページ開いて……」

(早速眠くなってきた……)


 すぅすぅ


(えっ、寝てる? まだ授業始まったばかりよ)


 ツンツン

 すぅすぅ


(本気で寝てるわ。右手で頭を支えて教科書を見ている様な格好をして。なんて器用な寝方なの。ふふふ、起こして差し上げましょう!)


 グイッ

 ゴンッ


「痛っ!」

(はっ、しまった)

「空峰ぇおはよう。今日の宿題はたくさん出すからね。寝てた分まで頑張りなさ~い」

「はい……」

(ふふふ、大成功!)


***


(まだ二時間目が始まったばかり)


 ちらっ


(おお、いいんちょって几帳面だな。なんて丁寧なノートなんだろう)


 さらさらさら


(あ、いいんちょって、左利きだったんだ。だから僕の左手といいんちょの右手がつながれても文字が書けるんだ)


 ちらっ


(な、何見てるのよ! ちゃんと黒板見なさい)

「そこの二人」

(はっ)

(やばっ)

「何見つめ合ってるんだ? 授業中だぞ! ふ、不純だ! 先生は、おまえたちをそんな風に育てた覚えはない! 二人には特別課題を出すからな」

「はい……」

「はい……」

(なんで優等生の私がこんな目に遭わないといけないのよ!)


 ギロッ


(ひえー)


***


「いいんちょ、三時間目と四時間目は体育だね」

「そうね、体操服に着替えに行かないと」

「そうだね……ちょっと待っていいんちょ」

「何?」

「よく考えたら体操服に着替えられないよ。ほら、つながってるから服が脱げない」

「あら、そうね……っていうか、わ、私の着替えを見るつもりだったのね! えっち!」


 ボコッ


「ぐへっ」

(そんなこと一言も言ってないよ!)

「仕方が無いから、今日は見学にしましょう」



「夏のグラウンドは暑いわね」


 ぱたぱたぱた


(いいんちょってどこから団扇を持ってきたんだ)

「今日男子はソフトボールなんだ。女子は……」

「大縄飛びよ」

「な、なんで大縄飛び?」


 カキーン

 ぽよんぽよん


(みんな一斉に縄跳びをすると目に毒だ……が目が離せない)

「空峰くん? 顔が赤いよ? 大丈夫? 熱射病かも」

「だ、大丈夫」


 ぽよんぽよん

 カキーン


「特大ファールだ。あ、空峰~」

「えっ!」


 ヒューン ボコッ


「はうっ」

(頭にボールが……視界が白くなっていく……ああ、まだあんなことやこんなことしたいのに……)

「そ、空峰くん?」

 

 コテ


「空峰くーん、帰っておいで……」


 ゆさゆさゆさ ブンブンブン バシバシ


***


(あ、頭が痛い……でもこの枕、柔らかくてすごく気持ちがいい……なんだかちょっと甘い匂いもする。ああそうか、ここは天国なのかな)


 カキーン

 ビュンビュン


「ナイスキャッチー」

「百一、百二、あ、引っかかっちゃった」

(あれ、ボールがバットに当たった音だ。それに縄跳びのような音……ということは)


 ちらっ


(やっぱり、体育の授業中だ。あれ、そうか、僕はボールが頭に当たって……ん? 僕はどこに寝ているんだ? 下は紺色の布、上は……いいんちょの顔! ということは、いいんちょの膝の上! なんで、どうしてこうなった? い、いくら何でも、いくらいいんちょでも、膝枕は伝家の宝刀。こんなことをされたら、いくらいいんちょでも、いくら僕でも……ドキドキするよ……)


 すぅすぅすぅ


(あれ、いいんちょ寝てる? 授業中なのに以外と普通の子だな。まじまじと見たことが無かったけど、結構かわいい顔してるんだ……そういえば隠れ美少女って一部の連中が言っていたような。せっかくだし、もう少しこのまま倒れておこう。……いいんちょ……か)

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