第5話 二人の放課後

 キーンコーンカーンコーン


 カツカツカツカツ

 ズンズンズンズン


「そ、空峰と委員長じゃないか。二人そろって怖い顔して、何の用だい? ふ、二人が僕に用事なんて無いはずだよね?」


 オドオド


「は? 何言ってんだよ! 今からこれの鍵を取りに行くぞ!」


 ギロッ


「そうそう、早く行きましょ! もう手首が痛くて痛くて。さっさと帰る準備しなさい!」


 ビシッ


「いやいや二人とも、僕は今からクラブだよ。終わったら連絡するから。じゃ」


 ひらひら~ ビューン


「……」

「……」

(普通今日ぐらいサボるよな!?)

(クラブは仕方が無い、仕方が無い……でも覚えてなさいよ! 委員長の名の下に、明日から持ってきたものすべて没収してやるんだから!)


「いいんちょ、どうしよっか。クラブが終わるのって夕方だし、このまま学校に残っててもね」

「どうしよう」


 ぐ~


(あ、おなかが鳴った。昼ご飯少なかったからなぁ)

「ふふふ、おなかすいてるの? お昼ご飯少なかったからでしょ。ね?」

(いいんちょって、こんなに柔らかな感じだったかな……もしかして地雷踏んだ?)

(今日は私のお弁当半分だけだったけど、明日はしっかりと食べさせてあげるんだから! そうね、帰りながら好きなものを聞き出さないと…… はっ、私ったら何を考えてるのよ……)

(今日のいいんちょって、コロコロ表情が変わるな。ニヤニヤしたり、難しい顔したり。いつも怒ってばかりのイメージだったけど、普通の女の子って感じだな、今日だけ)


「えっと、じゃ、ハンバーガーでも食べに行かない?」

(えっ? 帰りに寄り道? う~ん、風紀委員長として寄り道をするのはどうなの? う~ん、そっか、学校の外では委員会は関係ないわよね。なんだかデートみたい……はっ)

「ええ、そ、空峰くんがそんなに私とデー……じゃなく、ハンバーガーを食べに行きたいと言うのなら、いいい、いいわよ。も、もちろん、空峰くんのおごりでね。ふふふふふ」

(そういうことか……今月は少し厳しいけど、小食のいいんちょならなんとかなるか。……いいんちょがいつもと違う笑い方をしたら要注意、と)


「決まり。じゃ、行こっか」

「ちょ、ちょっと待って。こんな手錠したまま外を歩いたら警察に捕まるわよ」

「警察はともかく、普通に怪しまれそうだな。じゃ、タオル持ってるから、これで手錠を隠そう。鎖の部分にかけてみると……」

「う~ん、手首の部分も隠さないとだめよ」

「じゃ、手錠自体をタオルで巻いてみるのはどうかな」

「これなら手錠は見えないけど、なんか不自然。どっちにしても手首が痛いわよ」

(あっ、いいんちょの手首が真っ赤になってる! すごく痛々しいし、痕が残ったら大変だ。手首が細いからかな。なんかいい方法は……ん?)


「それでは裕作さん、帰りましょうか」

「そうだね、響子さん。僕たちはいつでもラブラブだね」

「そうですね」

「ではいつものように」


 ぎゅっ ブンブンブン


「……」

「……」


(手をつないであんなに振り回したら、腕がちぎれるぞ)

(いつもながら、見ていて恥ずかしいわ……)


「……」

「……」

(そうだ!)


 ぎゅっ


「えっ、そ、空峰くん!?」

「えっと、彼らみたいにしたら……鎖が緩んで手首が痛くないかなーと思って……さ……」


 ポリポリポリ

 ドキドキドキ


(一度女の子と手をつないでみたかったんだよな……いいんちょだけど……なんだか悪くないな……)

(えっ、やだ、こんなにドキドキして、私乙女になってる……)

「し、しきゃたないわね、そ、そう、ううう手首が痛いから仕方がないのよ! 空峰くんだって痛いでしょ? だから、ててて、手をつないであげるから、かかか、感謝しなさい!」

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