後書き
この
「ガレオン船と茶色い奴隷」のような長い小説を読むのは誰でも
私は、頭をひねった挙句、登場人物たちの生活を掘り下げる
そこで、何を書けばよいか?
私は初めて小説を書く直前まで、大量の小説と映画に触れていました。そこで多くの作品においてテーマにされていたのが、差別と暴力、自由と平等です。
現代日本において、これらの問題に直面する機会は少ないでしょう。
私もそうです。
では、日本に住む日本人で、かつ男性である私が、差別を描けるのか、そう考えたのが、「ガレオン船と茶色い奴隷」執筆のきっかけです。
決して職業的小説家になろうなどと思ったためではありません。
主人公は『白人男性と差別される民族の女性との間に生まれた男』としました。また、私は彼を、自由を保障された身分と奴隷の身分との中間である、「奉公人」と呼ばれる立場に置きました。
「奉公人」とは期間限定の奴隷で、仕事を選ぶ自由どころか、自分の体をどこに置くか自由意思で決める権利すらありません。実際この制度はつい数十年前まで、日本でも当たり前のように行われていました。
皆さんも「
ですが、私は差別を描く際に、露骨な方法は採りませんでした。憎悪発言や暴力などではなく、人々の深層心理にまで染みついた差別意識から生まれる言動を描きたかったのです。
それがどのように内面化され、行動に移されるか。
それは「ガレオン船と茶色い奴隷」でも描きましたが、そもそもあの小説はあまり読まれていません。冗長なので当然です。
そこで、私は短い掌編小説の中に、目に見えづらい差別を詰め込むことにしました。
それがこの掌編小説群の一貫した主題です。
「いったい、主人公はなぜこんな目に遭っているのだろうか」
「なぜ、主人公はあれだけ買い物に苦労したのか」
「なぜ、危険な川ざらいをしている奉公人の群れは茶色と黒にみえたのか」
「なぜ、迷子を助けてくれた主人公に対して、迷子の母親はあのような態度を取ったのか」
それが答えです。ただそれだけの事です。推理小説のような謎解きがあるわけではありません。
このシリーズをお読み頂いて有難うございました。次は別の主題で様々な作品を書いていきたいと思います。
芝原岳彦
(一話読み切り)混血の奉公人ヨハネの日常 芝原岳彦 @t-shibahara1984
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