冬しかない国の森の中に住む魔女・テナと、相棒の白熊・プーヴァ。
白熊といえど、魔女に育てられたプーヴァは二足歩行で人間の言葉を話し、掃除も雪かきもお料理もお菓子作りもなんでもできる、素敵な白熊なのです。
そんな一人と一匹が暮らす家を訪れるのは、切羽詰まった悩みをかかえる客人たち。
彼らの悩みを聞き、テナは魔女の薬を与えますが……。
数話で完結する短編が連なった物語です。
どうしようもなくなり、魔女のもとにやってくる客人の悩みはさまざま。
思わず同情してしまう事情もあれば、「えっ!?」と驚く強烈な願いを持った客人も。
テナが作って渡す魔法薬もさまざまですが、さて素直に「めでたしめでたし」となるか……。
ぜひ、ご自身の目でお確かめください。
一年中冬が続く、とある寒い国の森の奥。小屋でひっそりと暮らしているのはものぐさ魔女のテナと、人間に変身することができる白熊のプーヴァでした。
普段は滅多に人がやってこない森の中。だけどそこに行けば魔女が願いを叶えてくれる。そんな噂を信じて、今日も誰かが小屋の戸を叩く。
テナは決して、悪い魔女ではありません。面倒くさがりながらも、なんだかんだで訪ねてきた人の願いを叶えてくれます。
ただ注意しないといけないのは、テナは願いを叶えるだけ。叶った後その人がどうなるかは、あずかり知らぬところ。「後の事は知らない」とほったらかしです。けどそれは決して、テナが悪いと言うわけではなくて、考え無しに願いをして叶ったところで、幸せになるとは限らない。これはそういうお話です。
各章ごとに様々な願いを持つ人がテナの元を訪れますけど、本当に多種多様な願いがあって、あっと驚く結末を迎えてしまう話の作りには感服しました。
依頼者の願いをテナが叶えて、その結果予想外の方向に話が進むと言うのが基本的な流れ。ですがパターンにそっていても、毎回個性豊かな依頼者が出てきたり、願いの内容がビックリするようなものだったりで、読む人を飽きさせません。
アナタもテナに、願いを叶えてもらいませんか? ただし叶えてもらった結果どうなるか。後の事は知りません。
一年中雪の降り続く国の森の中に可愛らしい魔女と相棒のシロクマが住んでいます。魔女の名はテナ、シロクマの名前はプーヴァ。彼らは悩みを持って訪れる人々に、オリジナルの魔女の薬を差し出します。
「これを飲んだら元に戻れない、それでもいい?」
その言葉通り、それは飲むと願いを叶えてしまう世にも恐ろしい魔法の薬なのでした。
とにかくプーヴァが可愛いんです。毎回毎回気を使ってお客さんを迎えたり、家事を一生懸命したり、テナの言いなりなところとか。テナはテナでツンツンしてて完全なツンデレ(そこがまた良い!)。飯テロ要素も満載でプーヴァが作る物は非常に魅力的、作品読みながら何度ホットミルクを入れたか分かりません。
変わった依頼人が多くて、薬の効果もとてもオリジナリティがあり、話の展開は教訓めいていてとても面白い。タグに『大人向け童話』とある通り、大人のための話がふんだんに用意されてます。毎回どんなお話なのだろうと楽しみに読み進めました。
どうしようもなく救われないのにあまり暗い気持ちにならないんです。不幸な展開になっても幸せな気持ちでいられるのがこの作品の特徴かもしれません。
都合よく望みをかなえる薬なんかない、幸せは薬でなく自分の手で努力して掴む物。このストーリーにはそんなささやかなメッセージが込められているのかもしれません。
魔女というと、しわくちゃおばばをイメージしませんか。
森の奥深くにいて、「イーヒヒヒヒ」と笑いながら子供をさらって鍋で煮込む……
本作は白熊がコトコト鍋でシチューを煮込んでいます。
もちろん子供が具でも出汁でもありませんよ。魔女ちゃんもしわしわおばばではありません、ピチピチすぎるお嬢ちゃん魔女です。
しゃべる白熊と編み物が趣味のものぐさ魔女の二人が住む家に、相談にやってくる客たちは皆個性的。そして、やはり魔女ですからね……相談者の希望通りいくかというと、そこにはビターな結末が待っているのです。
エピソードひとつひとつが面白くて、単純なほのぼの系じゃつまらない読者には、超おすすめです。こんどの客は手強いぞ、さてさてオチはどうなるっとワクワクしながら意地の悪い笑みも浮かんじゃって(笑)
感動的なエピソードに自分に問いかけたくなるエピソード、ぞっと怖くなるものまでそろっております。短話形式なので、興味を持ったエピソードから覗いてみても面白いかもしれません。ですが、ひとつずつ歳を重ねていく魔女ちゃんの姿を見るのも親心のようなものでしみじみとしてきますよ。
冬の季節が当たり前、そんな異世界で暮らす白熊と魔女、ほのぼのビターな作品です。
怖い魔女がいるとされる森に住んでいるのは新米魔女と、その相棒の白熊。
手芸は好きだけど、魔法の勉強はしたくない魔女の元に訪れるのは問題を抱える人間たち。
魔女と白熊は人間の話を聞き、問題を解決できる薬を渡します。
一つ一つのお話はサックリ。
後味は苦味が少々。
お菓子を食べたり、話をしたり。
魔女テナと白熊プーヴァの日常はほのぼのしています。そして2人だけで問題ないのです。
そんな日常に舞い込む人間のお願いは、テナにとっては厄介事でしかなく、他人事。
そんな相手に願う。ましてや元には戻れないような薬を軽率に飲んでしまう。それはとても危ないことだという、寓話のようなお話でもあります。
それでも、こんな魔女と白熊がいるのなら、一度くらいは会いに行ってみたい。
そう思ってしまう魅力的な2人のお話、いかがでしょうか。
えー、まず……笑うセールスマン、地獄少女、キノの旅、そして白熊がお好きな方は問答無用で読む事をオススメ致します。
もうこの時点で言いたい事は殆ど言ってしまっているのですが、この物語は「魔女」であるテナと、その相棒である白熊のプーヴァの元に訪れる人々の悩みを、テナが「魔女らしく」ちょっとダークに、ある意味ハッピーに解決していく物語です。
完成度、非常に高いです。
テナとプーヴァのやり取りに癒されつつも、そこに訪れるゲスト達に待つ結末をワクワクしながら覗いている感覚、実に面白い!
ダークな感じとのほほんとした感じがまるでコーヒーとミルクのように混じり合う物語!是非皆さんにも読んでいただきたい!
一年中雪が降り積もる国。その森には、魔女テナが暮らしていました。
巷で噂されているような怖しい容姿をしているわけではなく、女子力高めの白熊プーヴァと一緒に暮らしています。
さて。
そんな彼女の住まいには、ときどきお客様が訪れます。
ちょっと困った、相談事を持って……。
基本的には短編連作で、『世にも奇妙な物語』のような味わいがあります。
ただ、もふもふな白熊や、彼が作る極上の料理が物語を、やわらかく、童話風に仕立て上げています。
無理なく読める一話の文字数と、区切りの良い短編という形式が個人的にはおすすめポイントでもあります。
雪深い森の中で語られる、不思議でほんのちょっぴりスパイシーなお話を、どうぞご堪能下さい。