大きな時代の流れを痛感せずに居られない、ツンデレを巡る青春ラブコメ。

かつて……そう、およそ10年前にサブカル界隈では、空前の「ツンデレブーム」が席巻していた時期がありました。
ラノベ『涼宮ハルヒの憂鬱』がアニメ化されて大ヒットし、『ゼロの使い魔』『灼眼のシャナ』『とらドラ!』といったツンデレヒロイン作品で声優・釘宮理恵の人気が大爆発した時代です。

かくいう私も当時はツンデレブームのど真ん中に居合わせ、いくつものラブコメラノベ(及びアニメ)に触れ、気心の知れたオタク仲間と共に「真のツンデレとは何か?」と昼夜を問わず語り合い、ときには意見の食い違いから河原で殴り合い、やがて沈む夕日と共に握手を交わして笑い合ったものです(誇張あり)。

実は当時、あまりにもブームが過熱し、それが一般層まで普及してしまった影響で、なんとごく普通の女性雑誌などにまで「男子のハートを掴む恋愛テクニック~目指せツンデレ女子!」的な特集が本当に組まれて記事になったことがありました。
それは上述のようなツンデレファンのあいだでも大きな問題として注目され、「果たして後天的に取得されたツンデレ性は真のツンデレと言えるのか?」という点について、喧々諤々の論争を呼び起こしたのです。

とはいえ、そうした議論もいまや昔のこと。
ツンデレブームも去り、サブカル消費者の嗜好は正統派ヒロインへ回帰傾向を見せているようです。

この小説を読むと、あれから本当に長い歳月が過ぎたのだなあ……
と、色々な意味で隔世の感を覚えずに居られません(遠い目)。
過去のブームの生き残りとして、大変興味深い作品でした!

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