いじらしく健気でありながらも、どこかでスベッている女子高生、チャコちゃんの奮闘物語。関西風のノリで、面白さ抜群の恋のお話です。
「ツンデレ」って、男子から見ればそのギャップに萌えてしまうのでしょうか。チャコちゃん、頑張ります。もう、徹底的に「ツンデレ」を我が物にしようと頑張ります。果たして結果はどうなるのか?
それはご覧いただくとして、これだけの文章量でありながらとても上手く構成されているのは、作者の手腕なのでしょう。
物語の基本の流れをきっちりと押さえ、そしてラストへいざなってくれます。ラストのチャコちゃん、これには笑います。
青春ラブコメ、ここにあり、ってところでしょうか。
「あたし、ツンデレになります! ……で、ツンデレってなにすんの?」
この段階ですでに面白い。
片思いの彼が、「ツンデレっていいよね」と、友人に相槌を打っているのを聞いてしまったチャコは、自らツンデレになることを宣言。だが、肝心のツンデレが分からない。
恋する彼のハートを射止めるために、犬系関西弁女子のチャコは、ツンデレを調べることから始める。
だいたいの男性読者は、もうこの辺りでチャコにやられちゃってることだろう。
勘違い女は腹立たしいが、恋する勘違い少女は見ていて微笑ましい。
勘違い→空回り→大失敗と、チャコの恋のドタバタは続く。きっとしばらく続くことだろう。
ただ、ひとつ。
欠点といったら大げさだし、難点というほどのものでもないのだが、作者は会話文たげを集めて書くスタイルをとっている。これは長編の「Strange・Ace」でも同様なのだが。
「おはよう」
「おはよう」
みたいに。
これ二人だけのダイアローグだと問題ないが、ここにもう一人加わって三人で会話すると、だれがなにを言っているのか、読者はしばし考えることになってしまう。が、まあ、これは些細なことかな。
バリエーション豊かなボケ、ツッコミの数々が面白く、あっという間に読めてしまいます。
会話のみならず、口語を生かした地の文でもボケとツッコミが展開されて、読み手も一緒にコケられる文章です。
特に最終話では主人公の叫びに思いっきり共感することができます。
ラストの一文まで笑いを忘れず、とても楽しく読めました。
それぞれキャラが立っていたのも良かったです。
そのキャラとコント的会話がバッチリはまっていました。
情景が浮かんでくるような場面もしっかりとあり、テンポの良さを全く損なわせずに描写できるのは素晴らしいです。
さり気なく書かれていたことが最後の最後で伏線として回収されていて、うわ上手いな、となりました。
思わず主人公を応援したくなる暴走しきれない女子?のお話です。
かつて……そう、およそ10年前にサブカル界隈では、空前の「ツンデレブーム」が席巻していた時期がありました。
ラノベ『涼宮ハルヒの憂鬱』がアニメ化されて大ヒットし、『ゼロの使い魔』『灼眼のシャナ』『とらドラ!』といったツンデレヒロイン作品で声優・釘宮理恵の人気が大爆発した時代です。
かくいう私も当時はツンデレブームのど真ん中に居合わせ、いくつものラブコメラノベ(及びアニメ)に触れ、気心の知れたオタク仲間と共に「真のツンデレとは何か?」と昼夜を問わず語り合い、ときには意見の食い違いから河原で殴り合い、やがて沈む夕日と共に握手を交わして笑い合ったものです(誇張あり)。
実は当時、あまりにもブームが過熱し、それが一般層まで普及してしまった影響で、なんとごく普通の女性雑誌などにまで「男子のハートを掴む恋愛テクニック~目指せツンデレ女子!」的な特集が本当に組まれて記事になったことがありました。
それは上述のようなツンデレファンのあいだでも大きな問題として注目され、「果たして後天的に取得されたツンデレ性は真のツンデレと言えるのか?」という点について、喧々諤々の論争を呼び起こしたのです。
とはいえ、そうした議論もいまや昔のこと。
ツンデレブームも去り、サブカル消費者の嗜好は正統派ヒロインへ回帰傾向を見せているようです。
この小説を読むと、あれから本当に長い歳月が過ぎたのだなあ……
と、色々な意味で隔世の感を覚えずに居られません(遠い目)。
過去のブームの生き残りとして、大変興味深い作品でした!
青春ラブコメもの。
「ツンデレ」とはもともと、ギャルゲー等で最初はツンツンしているがイベントがきっかけでデレデレになる、というある種心理変化をさすスラングだったが、のちに照れ隠し等のツンとデレが同居しその二面性によるギャップに魅入られるなどといった意味に変化していき、現在では多種多様な解釈がされている言葉です。そんな最早複雑怪奇な存在となってしまった「ツンデレ」になろうとする関西女の子の奮闘物語である。が、見事に空回りしています。そのポンコツっぷりがまたラブコメものとして非常に面白かったですね。終わり方も青春感満載でオチがきれいなところもいい!
また三人の女の子たちのキャラクター性も素晴らしく魅力的でしたね。この三人の日常会話は絶対面白いと思います。そこだけを切り取った日常ストーリーとかも読んでみたいかもしれませんね。
キャラクター性とラブコメに特化さした作品。短い作品ですので、隙間時間に読めます。隙間時間を充実にしたい方は是非読んでみてください。面白かったです。ごちそうさまでした!