あんかけうどんを食べるその様子が、ありありと浮かんできました。
見た目のぷるんとした冷たい感じ、けれど箸を入れてうどんを引き出した時の出汁の匂い、立ちのぼる湯気、口に入れた時のちょっと火傷しそうな熱さ…。
視覚、嗅覚、触覚、味覚と、たいへん豊かに描かれていて、あんかけうどんを「食べる」ということを読み手に追体験させるような見事な描写でした。
あんかけうどんの描写が豊かだったからこそ、そこから派生していく拓の秘めた思いにも、不思議な臨場感が生まれます。
外から見ただけでは分からない、誰かを想う熱い気持ちが、とてもリアルにに感じられました。
ユニークな食文化をもつ名古屋の庶民の味。
そんな熱々美味なあんかけうどんを、大好きな美人の姉が自分のためだけに作ってくれる──。
多くの男性にとって垂涎もののシチュエーションに、文字からもその熱が伝わってくるような熱~いあんかけうどんのリアルな描写が体も心も熱くします。
ぷるんっとした熱々の黒いあんかけの中から出てくるのは、太くてコシのある麺や、出汁の旨味をたっぷりと含んだ肉厚の干し椎茸、そして歯ごたえの嬉しいかまぼこや栄養バランスも考えられたほうれん草。
どれも庶民的な食材だけに、絶妙な味と食感のハーモニーが熱さとともに鮮明に思い浮かべられ、食欲を存分に刺激します。
けれども、刺激的なのはあんかけうどんの熱さと美味しさだけじゃない!
思わせぶりな姉の言動に、主人公である弟と共にドキドキさせられてしまうこと間違いなし(笑)
刺激的な熱さがダイレクトに伝わるこの物語を、暑さに向かうこの時期こそ楽しんでみませんか(^^)