女性読者悶絶の西洋恋愛譚

 


 お見合いを19回断られ、痛っ! ……失礼しました、うち1回は自分から断ったアレクシア・フォン・ヴォルフヤークトは、致し方なく就職先を探すも、姉の紹介で面接におとずれた家庭教師の働き口はすでに5回断られている。実家はお取りつぶしの憂き目にあっているため、行く先のないアレクシア。

 ところがひょんなことから、暴漢に襲われた人形のように美しいお嬢様を助けたことにより、そちらのお屋敷で家庭教師として雇ってもらえることになる。……ことになる。……ことになる。……ことになるのだが。

 そのお屋敷のお嬢様、ジュリア・オブ・ルクトニア。先王の遺児。彼女は一見超絶美少女なのだが、よく見ると男。しかも、わがままで身勝手な性格の、おれ様男子なのである。
 彼は対外的には女であると偽って、現王の目から逃れて生きていたのだ。

 そんなジュリアに家庭教師として雇われたアレクシア。当然本来の役目は全然ちがう。宮廷内部の陰謀に巻き込まれ、ワルツしか踊れないのに舞踏会につれ出され、その結果ワルツも大して踊れないことが発覚したりとさんざんなアレクシアだが、徐々にジュリアとの距離は縮まってゆき……。


 とにかく、読んでいて、ああこれ、女子にはたまらんだろうなぁという展開が目白押し。はちゃめちゃ王子様のジュリアと、サムライ気質のアレクシア。二人のやりとりが、とくに楽しい。そして、女性読者悶絶の展開を作り出すため、えっ、そんなバカなという話の流れは、やがて二人の運命を切り裂き……、だが、そこがまた女子悶絶の展開でもあり……。

 なるほど、女性読者の心をつかむには、こういう話を書けばいいのかというテキストとしても秀逸な本作。ただし、男性読者が読んでも充分に面白い。
 男性とは基本的に浮気性なものだが、それでもやはり、自分にとっての「アレクシアみたいな」女性を見つけたいと願っている。

 本作は、第17回角川ビーンズ小説大賞において奨励賞を獲得した名作である。
 とくに、話の流れとキャラクターの噛み合わせが素晴らしい。読んだ時間を決して無駄にはさせない作品であると保証する。




 というようなレビューを今書いたんですが、これ、続編があるみたいなんですね。で、ちょっとあらすじを読みに行ったら、「ぎゃー、なにこれ、超面白そうなんですけど!」

                              つづく

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