とにかく戦闘シーンの臨場感がすごい。傭兵団と一緒の大規模戦闘も、乱戦の中、ゴブリンを蹴散らし、強敵と命の削り合いをしている様子も、手に汗握って読んだ。魔法を使わない剣や弓矢による泥臭い戦闘なのだけれど、生身でぶつかっていくところがハイファン好きにはたまらない。
男二人の汗臭い戦闘だけではなく、街での様子や他の登場人物との絡みも上手い。だんだん女性も増えてくるので、暑苦しさもやがて解消する。
文章が整っていて読んでいて苦にならない。内容もゴツいけど、文章も硬派。主人公寄りの三人称を上手く使いこなせている。
一話の文字数が多く、かつスロースタートな作品だけれど、第二部第三部とどんどん面白くなっていく。戦闘描写を噛みしめつつ、ぜひ途中でやめずに読み進めてもらいたい。
続きを超楽しみにしている。
※第三部「終章 未知への再出発」まで読了
冒頭の少年を襲う悲劇から、それに続く一見淡々とした傭兵の人生へ。その鮮やかなコントラストに、秘められた物語の本流がどこへ向かっていくのか、強い興味をそそられます。主人公フィルにとって、剣を振るうことは生き抜くこと。ゆえに彼が力を爆発させる戦闘シーンは、読み手の心に迫る迫力あるものとなっています。
始まりのタイトルは『逃亡』です。しかし、読み進むにつれ、彼らが前へ前と『進撃』していると感じる、これは力強い物語。誰もが彼らの旅の仲間になりたくなるはず!
ちなみにファンタジー初心者の私は、映画『指輪物語』や『ホビット』の映像世界で脳内再生し、タンノーしております。押しメンは、酒を愛する陽気なゴーシェ様。
ファンタジーと魔法を切り離して考えられなくなっていたのは、一体いつからだろう——。
確かに、ファンタジーには魔法的要素がつきものだ。
現実とは異なる法則が存在するというのは、それだけで心躍るものがある。
だから、(ある意味ではその気安さ、手軽さに、)気を抜くと魔法が大きく幅を利かせる作品に傾倒するようになり、いつしかそれがファンタジーの本流であると考えるようになっている。
けれど。
幼い頃に心躍らせたあの物語は、果たしてそれほど魔法がちだっただろうか?
外が白み始めるまで読みふけったあの物語は?
胸にこみ上げる展開に涙したあの物語は——?
そうだ。私の決して多くない読書体験の中にも確かに、魔法がなくても魅力的な"ファンタジー"は存在した。
多様な定義があると思うが、少なくとも私の愛するファンタジーとは、魔法の気配の強弱にかかわらず、現実では決して有り得ない幻想的な空気に、或いは手に汗握る展開に、或いは一つずつ積み上げていくその"生きている"という感覚に、心が踊り、震え、気付けば何かが込み上げる——まさしく本作のような物語のことだったのだ。
ページを閉じた後、あなたもきっと幸せのため息と共にこう思うだろう。
これが、ファンタジーを読むということだ——、と。