燦然と輝く太陽ではなく、散らばった星屑のような、些細で確かな物語たち

時代の流れの中に置き去りにされてしまった物語たちが、
先人の研究と調査を経て記録の上に辛うじてとどめられ、
それらがこうして丁寧な考察を加えられ、演出を得て、
小説として私たちの前に立ち現れ、私たちを過去へ誘う。

白人の進出によって翻弄されるネイティヴアメリカンの誇り、
日本がバラバラの「国」を多数抱えていた頃の人々の価値観、
氷の海に望む北国、雪の頂の高山の国、凍った大地と狼の森、
宿業を背負う人々の国……様々な文化における人間ドラマ。

どの物語も素敵な中で、私はとりわけ「鬼の城」が好きだ。
一視点から語られて伝わる民話に多角的な想像が加えられ、
「そこで本当に起こったかもしれない」と感じられるような
手触りと厚みが生み出されて、鬼退治伝説が読者の胸に迫る。

うまくまとまらないけれども。
面白く、興味深く、楽しみました。

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