イントロダクション4
12時40分――特定のエリアではあるインフォメーションが表示されていた。
《現在、このエリアはARゲームで使用中の為に通行できません》
まさかの道路通行止めだったのである。カーナビでは表示されないので、スマホやARガジェットではないと確認出来ない。
こうした通行止めは草加市内ではよくある事だった――と言うよりも、ARゲームを道路等で展開している秋葉原や北千住も同様の事例がある。
「これは仕方がないと言うべきなのか――」
草加市役所へ向かおうと考えていた、自動車で移動中の議員の一人がつぶやく。
しかし、こうした事例は別の場所でも遭遇済みであり、半分あきらめている。仕方がないので、迂回ルートで草加市役所へ向かう事にした。
同時刻、襲撃者に狙われていた女性は――自転車で何とかして逃げていたのだが、遂に追いつかれてしまう。
気が付くと、襲撃者の数は5体に増えている。襲撃者が増殖するのはゲーム中でも同じなので、この辺りは驚かないのだが――。
「対抗策があれば――」
そう考えていた彼女は、自転車の駐輪場を発見する。どうやら、この近くにアレがあるらしい。
しかし――彼女はアレを起動する為のガジェットを持っていなかった。アンテナショップで購入できる物だが――。
周囲を見回しても、アンテナショップらしき建物は近場にはない。駐輪場があると言う事は、アレがある事は間違いないのだが。
『通行人及び一般車両にお知らせします。まもなく、大型ARフレームが展開されます。危険ですので、関係者以外は所定のラインより外に出るようにお願いいたします――』
近くに設置されたスピーカーから流れたのは、退去指示のアナウンスだった。つまり――アレがあると言う事だ。
そのアレとはARフレームである。全長5メートルにも及ぶ操縦型ロボットゲームで使用されるARガジェットでもあるのだが――。
「襲撃者にARフレームが有効なのかは分からないが――」
彼女もARゲームに関して、一定の知識はある。
拡張現実を使用し、VRとは違った新しいゲーム体験が出来るのが最大の特徴でもあった。
しかし、使用されるフィールドの関係で秋葉原や足立区内、それ以外でも一部エリアでしか浸透していない。
交差点の巨大ハッチを思わせるような場所が変形し、そこから巨大なコンテナがエレベーターを使って上昇しているようにも見える――。
5分後にはエレベーターが停止し、5メートル程の大型コンテナが彼女の目の前に現れたのだ。
『君に――あの襲撃者を倒せるというのであれば、この力を使うがいい』
コンテナのハッチが謎の声と共に開く。そして――その先にあった物とは、巨大ロボットらしき物だったのである。
これがロボットゲームの筺体と言うのも無茶な話だろう。見た目は明らかに本物のロボットに近いものだったからだ。
しかし、そのロボットはコクピット部分以外はフレームのみでアーマーが存在しない。
「アーマーはどうすれば――」
そう思った彼女だが、アレがここにあると言う事は――と言う事で、大体の事が分かってきた。
コクピットのハッチに手をかざすと同時に、ハッチが開き――そこには、シートとコントローラーと思わしき物が置かれている。
コントローラーはロボットを使うジャンルによっては未使用だが――?
「これは――?」
シートに置かれていた物、それには彼女も見覚えがあった。
小型のメダルをセットするスペースが存在する、その端末は――イメージギアにおける起動端末だったのである。
「これがあれば――」
彼女がシルエットだけのメダルをスペースにセットすると――シルエットのメダルはデザインが変化したのだ。
レアリティは虹色――つまり、最高レアリティの機体だったのである。
《アガートラーム》
機体の名称はアガートラーム――メダルをセットした瞬間には、先ほどまでアーマーが装着されていなかった機体に変化が起きていた。
CGで作られた走行がフレームに装着されていき、最終的にはパワードこれくしょんに登場したアガートラームのデザインを忠実に再現した機体が完成したのである。
北欧神話モチーフでありながら、SF要素などを含んでいるデザイン――白銀の腕は近接格闘に特化したようなイメージが強いだろう。
初期武装はブレードとビームライフル、ホーミングミサイルのみ。それを知った彼女は、もう一つのシールドビットも端末のメダルセット部分にセットする。
「やっぱり――過去シリーズの巨大ロボット要素を特化させた、パワードこれくしょんにも見えるような――」
彼女がモニター等をチェックしていく内に、何かの変化に気付く事となる。
フレームがアガートラームのデザインになっただけではなく、自分の姿も変化していたのだ。
ARゲームには必須のARメット、それにインナースーツが自動的に装着されているが――インナースーツは、自分の体格もあってむちむちのボディが強調されているとも言える。
それでも彼女が恥ずかしいと思わないのは、この様子が外の人間には見えていない事にあった。
『ガーベラ――君には、目の前にいる襲撃者と戦ってもらう。イメージギアの力で――』
次に聞こえたシステムボイスの様な声――そこで、まさか自分の名前が言われた事には自覚していない。
唐突過ぎる出来事の連続と言う事もあるのだが、今のガーベラにとっては――そんな事はどうでもよかった可能性が高いのだろう。
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