ステージ1-3
ロケテストも最終日を迎えた頃、何故かギャラリーが増え始めているようにも見えた。
今回のロケテストは未告知だったはずなのだが――何者かが情報を拡散したらしい。
これに関しては運営側も困惑をしていた。秘密裏にロケテストをしていた理由は、向こう側がロケテストを告知していない事にある。
ここで言う向こう側とはパワードこれくしょんのライセンスを持っているゲームメーカーと言うべきか?
あるいはイメージギアを販売している玩具メーカーか? どちらにしても――今回のロケテストの話が表に出る事は非常にまずかった。
『まとめサイトが動いた段階で、こうなる事は分かっていたが――何かを察したのか』
ネット上の動きに関して鹿沼零(かぬま・れい)は、何かの疑問を持っていたのである。
ロケテスト最終日に何かを起こし、ARゲームよりも超有名アイドルが神コンテンツであるという事を訴えるつもりなのだろうか。
ロケテストを行っていた施設は草加駅よりも2キロ位は離れている事もあって、他のARゲームの運営に影響は及ぼしていない。
ただし、一連の襲撃者に関してはシステムの暴走でまとめられるような案件ではない事を――運営側も把握している。
「原因は、このフレームなのだろうか?」
「フレームの構造が原因であれば、他の類似フレームでも事件が起きる。これだけが異常を発生するなんてありえない」
「あの襲撃者は、ゲームデータにも存在していなかった。むしろ、パワードこれくしょんの元原作――あちらがモチーフに近いだろう」
「だとすると、今回の事件はパワードこれくしょんを潰そうと言う懐古――」
「それはあり得ないだろう。今回のロケテストは、メーカー側の許可を受けた上で秘密裏に進めていた物。最終日のアレがなければ――」
現在は破損個所の修理という名目で、アンテナショップとは別の倉庫にフレームが置かれていた。
これは、ガーベラの使用していたフレームであり――ロケテストで一番襲撃者との遭遇率が多かったフレームでもある。
「それだけが理由とは限らないが――」
整備しているスタッフも、このフレームだけがやけに襲撃者と戦闘するケースが多い事には驚いていた。
材質は全部のフレームで共通の物が使用されており、これだけが特別という事ではない。
プログラムはロケテストで使用する関係上、通常運用される物とは違う物を使用しているのだが――。
ロケテスト最終日の会場では、今回の問題となったフレーム以外の5つを使用してロケテストが実施されている。
雨が降っている訳ではないので――気象変化によるバグ等は発生しないと思うのだが、それでも襲撃者関係の事件が解決したわけではない。
それを踏まえると客足こそは多いのだが、実際にプレイしようという人間が少ないのだろう。
巨大ロボットを動かすという発想自体、様々なロボットゲーム等で実践されており、何を今更――という声があるのはネット上でも把握している。
【パワードこれくしょん――これを本当にロケテストしているとは予想外だ】
【ゲーム中で登場したチップも実際に使用可能らしいが――】
【ソシャゲ版では擬人化メインだった気配もする】
【しかし、今回ロケテストされている物はイメージギアの世界観に近い物と言われている】
【メーカー公認とはいえ、ここまでのアレンジをどうファンが受け入れるのか――】
つぶやきサイト上でも様々な声が聞かれる中、最終日のロケテもクライマックスを迎えようとしている。
あのフレームを使用していないので、大きな事件も発生しない――運営スタッフもそう思っていたのだが、襲撃者は予告なく姿を――
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