イントロダクション3
お昼の12時を過ぎた頃、自転車でコンビニ前を通り過ぎようとした彼女は――普通に弁当を買いに来たのではない客を発見した。
「もしかしたら、ここならば――」
自転車を駐輪スペースへ置き、彼女はコンビニの店内へと入る。
店内には弁当だったり、ドーナツなども売られているのだが――その中に異色とも言える物があったのだ。
彼女が発見した物、それはガチャの自動販売機である。100円玉を入れるタイプで、おもちゃ屋等で目撃出来る――。
「あれっ? これは――違うかな?」
100円玉を投入しようとしたのだが、それは違うシリーズだった。イメージギアではなく、妖怪の擬人化物である。
機械は他にもあるので、ラベルを確認するのだが――お目当ての物は見つからない――と思われていた。
店内の奥側に配置されていた物、それが間違いなくイメージギアだったのである。
シリーズには様々な物があり、パワードスーツ物や神話系等があったのだが――。
『北欧神話コレクション』
まさかの物がヒットしたのである。
全長5メートル~最大50メートルクラスはザラのレア物、ある意味でゲームバランスギリギリとも言われたチップ――。
品切れの場合は100円玉が入らないので、まだ中身は残っていると言えるだろう。
「ビンゴ――かな」
彼女は100円玉を投入、カプセルの出口からは丸型のカプセルが出てきた。
空っぽではなく、振るとカラカラ――音がするので、間違いなく当たりだろう。
ここで中身を開ける訳にはいかないので、コンビニで適当にお菓子などを購入し、店の外へ出る事にした。
店の外へ出て改めてカプセルを開けるとメダルの形状をしたチップが2個入っていた。
片方は武器のイラストが描かれていたので、イメージギア用の武器チップだろう。メダルの色は銀なのでレアチップと言うべきか。
「銅、銀、金、白銀、虹でレアリティが変わるのはゲームと一緒か」
武器チップはシールドビットで、中距離用の武器だった。
シールドとしても利用できるので、銀というレアリティでも使用率が多いのが特徴と言える。
「もう一つは――?」
2枚目のチップには、メダル表面にグラフィックが描かれていない。厳密には影で隠されているというべきかもしれないが――。これは、俗に言うシルエットチップであり、実際に使用してからデザインが判明する特別仕様だ。レアリティとしては白銀か虹が確定と言ってもいい。
ここまで再現する必要性は――と彼女は思ったが、裏のデータを見て別の意味で驚くしかなかったのである。
「全長10メートルに――武装が複数? それに特殊コントロール方式の――」
メダルに書かれているのは最低限のデータのみであり、詳細なデータは小型のデバイスで読み込まないといけない。
しかし、そのデバイスはパワードこれくしょんのゲーム中での話であり、存在するはずがない――彼女はそう思っていた。
その彼女が自転車で帰路につこうとしていた矢先――ある見覚えがあるような存在が追いかけている事に気づく。
その姿は設定サイズが5メートル、大型の物では100メートルにも及ぶとされている異形の存在――。
「えっ!? そんな事――あり得る訳、ないよね?」
彼女は目を疑った。その正体は――パワードこれくしょんをプレイした事のある彼女には分かっている。
『襲撃者――』
周囲の他ゲームをプレイしていたプレイヤーもその手を止めてしまう程、そのインパクトは素うとな物であった。
形状はパワードスーツを思わせるような物やクリーチャー、更には恐竜や特定ロボットに似たようなデザインまで――。
襲撃者の目的が地球上の何かを狙っている事以外の設定は判明しておらず、シナリオの方も全貌が明らかになる前にはサービスが終了していた。
つまり、パワードこれくしょんは別の意味でも打ち切りエンドだったと言えるような末路をたどっていたのである。
「あれって、どう考えても襲撃者でしょ? 狙いは、この――」
襲撃者の狙い、それがイメージギアなのは明白だ。そして、彼女は何としても襲撃者から逃げようと考えている。
イメージギアを狙う襲撃者の正体が判明しなかった事もあり、下手をすると何処かのWEB小説やアニメのように襲撃者が現実化した可能性も否定できないだろう。
12時30分頃、ある非常事態を告げるメッセージを確認したのはARメットを被っていた鹿沼零(かぬま・れい)だった。
これ以上の視察は出来ないと言う事で、視察に関しては切り上げ――ARゲームに該当する部署などにメッセージを送信する。
【何者かによるシステム介入の可能性あり。大至急、ロケテスト中の機種に関して調査を指示する】
鹿沼は、今回の一件が芸能事務所や政治的な介入の可能性を否定したいのだが――あまりにも無計画と言うには不自然な個所もあった。
視察に関するデータはARゲームを担当する草加市役所の中でも一部しか知らない上に、警察が情報を手に入れられる物でもない。
ARゲームは警察がノータッチの物であるのは、秋葉原の一件等を踏まえると――確実なのだが。
「これを――使いたくはないのだが」
鹿沼の右手に握られている物、それは小型のメダルをセットする箇所が存在する、スマートフォン程のサイズをしたガジェットである。
この形状は、パワードこれくしょんをプレイした人間ならば、誰でも一度は見覚えがある物であり――。
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