ステージ1


 ARフレームのコクピットに乗り込んだガーベラは、目の前に表示された画面に驚くしかなかった。

 そして、唐突な展開の連続は彼女にとっても衝撃の連続だったのだが――それすらも忘れさせる物が、目の前にはあったのである。

「なるほど――そう言う事か」

 彼女は周辺の画面構成やコントローラー等を見て、即座に何かを把握した。この感覚は過去にも覚えがあったからである。

「襲撃者が来た理由も理解出来た。つまり、これは――」

 次の瞬間、アガートラームの拳が襲撃者の1体に直撃して消滅――。

 この光景に関しては周囲のギャラリーの方が驚いている印象がした。

【まさかの展開だ】

【本当にパワードこれくしょんなのか?】

【ゲリラロケテストと言うのは事例があるが――】

【実際に確認しない事には、ロケテストなのかも判断できない】

【これがCGによる合成と言う可能性も否定できないからな】

 ARゲームと言う単語が市民権を得たとしても、今回の一件を捏造としてまとめサイト等で炎上させようと言う事案は後を絶たないだろう。

 それ程に――ARゲームの劇的進化は、予想を大幅に上回るレベルだったのである。

 つまり、芸能事務所の上層部が所属アイドルの人気を奪う位に危険な存在だと――。

 1体目を撃破してからは、何かのスイッチが入ったかのように次々と襲撃者を撃破していく。

 元々、襲撃者は敵と言うポジションなのだが――その目的は不明のままにゲームのサービスは終わった。

 今回の襲撃者がパワードこれくしょんと同じ目的を持っているのかは、疑問に思う個所はあるのだろうが。

『君は面白い動きをする――』

 敵を撃破する度に謎の声が聞こえてくる。この声はボイスチェンジャーで声が代わっている訳ではないようだが、ノイズ混じりなので誰の声かが特定できない。

 まるで、アクションゲームを思わせるような位――さすがにAIが喋っている訳ではないようだが、監視しているような気配をガーベラは感じた。

『それ程のゲームセンスを持っていながら、何故に君はここへ来なかった?』

 アガートラームは次々と襲撃者を撃破していく。

 その様子はネット上でも配信されており、まるで格闘技中継を思わせるような――。

 ガーベラの姿が配信に出ている訳ではなく、あくまでも中継映像ではアガートラームが襲撃者と戦っている様子だけである。



 10分後、出現した襲撃者全てを撃破する事に成功したガーベラなのだが――。

 ARフレームから降りた所で何者かに捕まってしまう――と言う訳でもなく、何とかコクピットから降りる事は出来た。

 しかし、その後に駐輪場へ向かおうとした所で姿を見せた人物に声をかけられる事になる。

「君は面白いプレイヤーだね――」

 身長170近く、金髪で露出狂とも言えるような――痴女に近いような女性が通りかかった。

 そして、その女性に声を賭けられるのだが、ガーベラは何も答えない事にする。

 彼女の方も特に何かをするような事はなかった為、ガーベラを敵視している訳ではないようだ。

「いずれ、別の機会にでも会う事はあるだろうな」

 そのセリフをしゃべったあと、彼女は姿を消していた。どうやら、ARゲームの待機列に向かったようである。

「さっきの人は、一体――」

 コクピットから降りたガーベラは、乗る前の服装に戻っている事に気付かなかった。

 先ほどの人物はARゲーム用のインナースーツを着ていたようでもあるのだが――これからプレイするので装着されたのかもしれない。

「そう言えば、さっきのメットやスーツは――」

 このタイミングで、今更だが――自分の服装が元に戻っている事に気付いた。

 それ程にゲームへ集中していたとも言えるのだが、コクピットに入ってから記憶が飛んでいる訳ではない。

 襲撃者と戦った事は覚えているし、先ほどまでパワードこれくしょんのアガートラームを動かしていた事も把握している。


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