第8話 アンコ伝説へ


 

 1 男は黙って正面突破


 2 空から強襲は戦略の基本


 3 むしろ遠距離から呪文攻撃で良くね?


 4 下の下作。一人づつ様子見


 5 というか何で少数特攻なの馬鹿なの死ぬの? 軍隊呼べよ 総力戦だ!


 6 いやここは勇気を持って兵糧攻めで御座候!


 ttp://bulkyaruo.sakura.ne.jp/test/read.cgi/BUL/1406215094/2288

【1D6:4】


 → 4 下の下。一人づつ様子見 ←


ーーーーーーーーーーーーーーー


「こ……これは……っ」


「あー、やってしまいましたなぁー」


 ダイスが振られその数字を示すや、文字は赤く燃えるように色づき輝く。炎の揺らめきを思わせ輝きが蠢く様は、まるで文字という僅かな隙間から奈落の煉獄を覗き見るかのようであった。


「ふ、ふざけるなぁ!」


 荒涼とした大地に響く叫びを上げる勇者。枯れた木々に留まるカラスたちがそれに驚き一斉に飛び立つ。


「何がダイスだ! こんなおふざけに付き合っていられるか!」


「そ、そうだ! 魔王城に一人づつ吶喊とか、オバケ屋敷じゃねぇんだぞっ!」


 いきり立つ勇者に続くタカハシ。

 過去の経験から、まず当て馬にされるのは自分ではないかという予感が、タカハシにはあった。そうでなくても、何れにせよ自分一人で行動となってロクな事にはなりはしないだろう。

 

 凡そ魔王城などと言う高レベルフィールドではタカハシは無事ではいられないだろう。何とか生き延びる芽があるとすれば、PTの影に隠れてやり過ごすしかないのだ。


「おやおやー」


「いやしかしだな勇者、困った事にこいつの力は本物だ」


「そう……ですね、ロキさんが持つ紙から、とても強い力を感じます……とても、邪悪な力を」


 その目でもってロキの、いやさダイスのもたらす厄災を目の当たりにしたビリー。そして神に使える者としての嗅覚が危険を感じ取る僧侶。諦めたような、腰の引けた二人の態度に勇者の怒りは更に増した。


「解ったもういい! なら俺が最初だ! お前らは付いてこなくても構わない、俺が一人でも魔王を打ち倒す!」


 言うが早いか、勇者は踵を返し小さく早口、速度上昇呪文を己に付与すると呼びかけるビリーと僧侶の声に耳を貸すまいと駆け出した。


「くそっ、早まりやがって!」


 咄嗟に反応したビリーが駆け出す。

 残された僧侶は慌てふためき、ビリーの背中とタカハシを交互に見比べ逡巡し、結局二人の後を追った。


 暗雲立ち込める荒野に、そうしてタカハシだけが残された。


「いやはや、やっちまいましたなぁー」


 結果、勇者たちは一人ずつ順番に魔王城へ乗り込む事となった。運動神経と呪文のある無しで言えば、三者の距離は恐らく縮まらず合流する事はまず無いだろう。


「って! どうすんだYO!」


「どうする?」


 カメラに向かって猛烈アピールを開始するタカハシ。その背後に魔王城を映し、ロキは愚問とでも言うように問い返した。


「勇者PTが行っちゃって、俺一人じゃ引き返す事も出来やしないこの状況だよ!」


「いやいやいや、良いかねタカハシ?」


 腕をブンブン振って駄々っ子のように喚くタカハシに、ロキは諭すように優しく前置きし、語りかける。


「最後の一人、突入に決まっているじゃないかー」


「知ってた! ああ知ってたさ!!」


 ビシリとロキの指が魔王城を差し、タカハシは絶望に涙を流し叫んだ。

 ダイスが絶対だからね、仕方ないね。


ーーー



 松明を手に、暗闇の洞窟を進むがごとく、慎重にタカハシは歩を進める。背中は壁に預け、壁沿いを這うように一歩一歩進んでいく。


「タカハシ遅ーい」


 その背後を通路の中央、悠々自適に進むカメラ。ロキが文句を垂れると、タカハシはクワッと怒りの表情を向けた。


「じゃかしい! こちとらエンカウント=死ってデンジャラス肝試し執行中じゃい!」


「うむー。早く魔物が現れないか、待ち遠しいですぞー」


「冗談でもやめて!」


 むしろ魔物を呼び込むつもり満々なのか、大声で漫才を繰り広げる。

 だが幸運にも魔王城の門戸を叩き早い数刻。エンカウントの気配もなくタカハシは魔王城一階のそれなりの奥まで侵入する事に成功していた。


 というのも通路には所々に魔物の遺体が転がっており、先行する勇者たちが粗方切り伏せてしまっている様である。残る魔物も恐らくは勇者たちを追ってしまい、結果勇者たちに遅れる事相当かけてのっそり訪問したタカハシが訪れるに至り、魔王城の一階は手薄になった状態であった。


 タカハシの掲げる松明が、また一つの魔物の死体を照らし出す。


 この松明は魔王城の外に転がる死体からまだ無事な衣服の一部を頂戴して拵えた、元タカハシの右手から外れない呪われた棒っキレである。図らずも需要によって、棒っ切れは本来の姿を取り戻したのであった。


「冗談ではないんだけどなー。あー暇だなー、こんなんじゃ取れ高も望めないですぞー? あー、暇だからダイス振っちゃおうかなー」


「らめぇ! ダイスだけは振っちゃらめえええええ!」


 手の平でダイスを弄ぶロキ。

 咄嗟に、ツッコミ半分、ガチで止める気半分で振り返ったタカハシの腕が、


「――あ」


「うきょおおおおおおお!?」


 ロキの手を弾く形、当たってしまった。

 ダイスが宙を舞う。タカハシが手を伸ばす。しかし体勢を崩したタカハシの手はむなしく宙を掻く。


 カンッ、暗闇に沈み、ダイスが音を鳴らす。それから二度三度と跳ね、転がり、やがて静かになった。

 闇を見つめるタカハシの表情が、再び絶望色に染まる。


「…………」


「あー。やってしまいましたなぁー」


 静寂に、場違いに明るく面白がるロキの声だけがあった。


「なぁんて、紙に選択肢が書かれてないとダイスもそこまで明確な悪意を導く事は無いのだよ、タカハシ」


「ほ、ホントか!?」


 明るく声をかけるロキ。沈みきった表情から一変、タカハシは笑顔を取り戻し振り向いた。

 その眼前には一枚の紙があり、


 4    トラップは生きてるよね

 9    死体だ!

 10   おっと?

 その他 何もなし

 1D10


 ttp://bulkyaruo.sakura.ne.jp/test/read.cgi/BUL/1406215094/2290

 【1D10:4】


 闇の中でダイスが示した数字に応え、禍々しく輝く文字が揺らめく。


「だから、急いで書いてみましたぞ☆」


 急ぎ故選択肢はザックリという訳である。


 そして、タカハシの足元がバカンと両開きに大口を開け、


「そんなこったろうとおもったさああああああああああぁぁぁぁ」


 階下に広がる漆黒に、タカハシの叫びがフェードアウトしていった。



ーーーー



「――――シ」


「ん……」


「タカハシー起きろー」


「うばっ!?」


 開かれた視界にカメラがドスコイする勢いで迫り、驚き上体を起こしたタカハシは額を思い切りカメラに打ち付けた。


「ブベッ」


 突然の事にロキも対応が間に合わず、タカハシのデコに突き飛ばされたカメラを食らい思わず仰け反る。


「い……イチチ……」


 天井に向けられるカメラ。

 左右に等間隔に並び立つは、ガーゴイルを模した彫像を掲げる柱の群れ。彫像の口蓋の備えられた明かりから漏れる明かりが、仄かに周囲を照らし出していた。


「いきなり酷いじゃないかタカハシー」


「あ、悪い……」


 むくりと起き上がり、未だ額を押さえるタカハシを捉えるカメラ。その右手には変わらず張り付く松明が握られている。


「ほう、久々にエサが落ちてきたかと思えば……」


 低くひしゃげた声は柱の並び立つ先よりした。

 喉に気泡が溜まっているかのように、濁った声だ。


「誰だ!?」


 無駄に格好良く膝立ちに体勢を整え、タカハシは右手の松明を声のする方へ掲げた。カメラもまた、それを追って松明に照らされる奥の空間へと視点を映した。


「不思議じゃのぅ。ワシの見る限り足からひしゃげ、刹那にして見るも無残な肉塊へと変わり果てたかのように見えたのじゃが……。どうして貴様は生きておる?」


「う゛え゛?」


「ん?」


「……足……? いや、大丈夫だよな……」


「言ったじゃない、タカハシは死なないって」


 タカハシを追って穴に飛び込んだロキ及びカメラは、たしかにそれモザイク処理を映し出していた。しかしロキの声が呪文らしき何かぴぴるぴるぴるぴぴるぴーを唱えるや、見る見る内に赤き血肉が躍動し、逆再生するかのようにその肉体を復元していったのである。


 死なないというよりは、死なせない。悪意よって行われる死のモグラ叩きのようなものである。


「ほぉ? そこの貴様の仕業か。まぁ良い。

 ――良くぞここまで来た」


 と、柱の足元に篝火が灯った。

 それは順々に、奥へ向けて灯っていき、誘うように道を照らし出していく。


「ごくりっ」


「……なぁ、これ行かなきゃダメ……だよねぇ……やっぱり」


「せっかくのお誘いですからなぁ。断るのはヤボってもんですぞ」


「デスヨネー」


 意を決して踏み出す。


 実際一度死を経験した事で、タカハシには一手妙案を思いついたのだ。

 いずれにせよ、覚悟を決めるしかなかった。


 奥へと進むタカハシをエスコートするように、足元の篝火はタカハシの足元を照らしてゆく。

 やがて大分歩いた頃、タカハシの少し前を先行するようにしていた篝火は途端に眼前のとある空間を囲むように、走った。


 篝火に囲まれ、炎に仰ぐように照らされ、


「この、魔王の元へっ!!」


 巨大な龍のような魔物。縦にも横にも大きく、その肌は暗雲立ち込める荒野の如く浅黒い。身に纏うのはいかにもな刺繍の施されたトーガ。肩幅ほどもある重厚なネックレスには多種様々な頭蓋が連ねられている。


「カバだこれ!!」


「ああ、アレだね」


 思わず叫ぶタカハシ。SEを入れるならばズビーンッ、とか、ギャグ漫画なノリのあれである。

 

 そう、眼前に聳える魔王は、タカハシの元いた世界のとあるゲームの魔王、その姿に瓜二つだったのである。むしろそのものに近い。敢えて言うなら色合いはブロスである。


「いやぁ、何でこんなトコにカバがいるんだ? 魔王はどこだ?」


「本当に不思議ですなぁタカハシ、こんな地下奥深くにカバが居るなんてー」


 額に手を添えて周囲を見渡すフリをするタカハシ。悪ノリするロキもそれに続き、カメラをズームさせ魔王の顔をまじまじと映す。


「いやぁ見事なカバだねぇ、よく肥えてますなぁ」


「そんな事より魔王はどこだ!? 俺の嫁、金髪ロリ魔王は!」


 煽りまくる二人。勿論、先だって思いついたタカハシの妙案はコレではない。これは|カバな魔王に相対した時の様式美のようなものDQアンソロ四コマネタなのだ。


「いい加減にぃ……」


 まぁ当然怒る。

 プルプルと小刻みに震えていたカバこと魔王は、奥歯をギリリと噛みしめると漏らすように唸り、


「せんかぁ!!」


 口内に貯めた加えた灼熱の火炎を一気啖呵と吐き出し、タカハシへと浴びせかけた。


「おっと」


 すかさずバックステップ、距離をとり離れるカメラ。

 タカハシは、


「うぎゃああああああああああああああああああああああああああっ!」


 燃え盛る火炎に飲み込まれ、既に見る影もなくその身を黒く焦げあげさせていた。



「ふんっ、大口を叩く割に他愛のない」


 炎も収まり、魔王とカメラの間には燃えカスとなり転がるタカハシだったものが転がっていた。プスプスと未だ残る熱が細い煙を上げている。


「こらいかん」


 棒読み口調でロキが呟き、そしてまた呪文ぴぴるぴるぴryを唱えた。

 そしてカメラ一杯に施されるモザイク処理。音声ももれなくピー音である。


「う……ううん……」


 モザイクが解除されると、そこにはすっかり元通り、衣服まで再現されむくりと起き上がるタカハシの姿。勿論右手には棒っキレが粛々と焔を灯している。


「なんと! これでも起き上がるとは!?

 さてはお主、神より遣わされた、その祈りにより死ぬ事がないとされる光の勇者じゃな!?」


「な、何のことやらサッパリだ! 女神というより貧乏神! いや悪魔だよコイツは!!」


 右手の松明を両手に握り、タカハシは正眼の構え、魔王に向き直る。

 二度目の死を持って確信に変わった。タカハシには自信があった。


「何か知らないけど気合十分だねー、がんばれタカハシー」


だあらっしゃ黙ってて下さい!!」


 叫び、魔王に駆け出すタカハシ。50mを13秒かけるその足で、松明を手に魔王へ迫る。


「あまりの弱さに我が目を疑う所であるが、しかし勇者と知れたからには見逃す訳にもいかぬ! 爆裂呪文!」


 しかし魔王が右手を掲げ、その手の平に煌めく瞬きを解き放つ。


「うぼあああああああああああああああ!」


 放たれた輝きはタカハシの胸元で炸裂し、周辺の空間をも巻き込み無数の爆発を巻き起こした。


「ぴぴるぴー」


 そして、粉微塵になったタカハシはモザイク処理を施される。


 後はそれの繰り返しである。

「うおりゃあ!」

「ぼへぇ!!」

「てりゃあ!!」

「おごぉ!」

 起き上がり駆け出すタカハシ。魔王は魔法でそれを打払い、またその口膣から解き放つ火炎や凍てつく冷気でもってタカハシに確実な死を齎していく。


 タカハシの秘策は単純明快。ゾンビアタックである。


 本来はゲーム用語であるが、要するに何度も復活を遂げられるので、勝つまで突っ込む。または、与えたダメージが累積される場合は復活を繰り返す事で相手が死ぬまで続けるという不毛な作戦だ。

 今回の場合は後者に当たる。タカハシの死はリセットボタンのセーブから復活ではなく、その場でも復活であり、与えたダメージがリセットされる事はない。故に、喩え攻撃力皆無の棒っキレであろうと、死ぬまで殴ればいつかは倒せるのである。


 ちなみに今のところタカハシが与えたダメージは0である。


 数字化とかそういうのを抜きにして、皆無なのだ。


 動画にしてみれば現在は二倍速処理と言った所であろうか。


「ぜぇ、ぜぇ……」


 倒れては起き上がりで徐々に距離を詰めていくタカハシあるが、時たま、魔王に気まぐれであろうか放たれる爆発・衝撃系の魔法を食らうと振り出しに戻ってしまう。


「しつこいわぁ!! 極大真空砲術!!」


 掌の付け根を合わせ、突き出される。両手に蓄えられた魔力が渦を巻く風となり、横方向へと伸びる竜巻がタカハシを襲う。

 恐るべき速さで渦巻く竜巻に捕らえられ、真空状態となる渦の中央、タカハシの身体が一瞬の内に切り刻まれ遥か後方壁際まで吹き飛ばされた。


 これではふりだしどころかマイナスでのリスタートである。


 三度ロキが呪文を唱えると、そしてまた元気にタカハシは魔王めがけて駆け出す。

 元気というよりは自棄であった。


「いやぁあああああああっ!」


「おのれしつこいっ! こうなれば……っ」


 疲れ果てたというより辟易してきたのが正解か。魔王は両手を腰の高さに広げ、タカハシを受け止めんかという構え、今度は攻撃をしてこなかった。


「せいっ!」


 そして初めて、タカハシの棒っキレが魔王の身体へと届く。


「ぜぃ、ぜぃ」


「ふははは……」


 しかしタカハシの持つのはそこら辺の野っ原に落ちてただけの棒っキレ。呪われはしたが棒っキレ。先端に炎を灯していたとしても良くて松明なのだ。魔王の身体、皮膚どころか衣類にすら有効打には程遠かった。


 だがこの小さな一打が、いつか状況を左右する一打となる。


 ――筈も無かった。


「どれ」


 グワァと大きく開かれた口が、ゆっくりとタカハシに向けて下ろされる。大きく突き出した両顎が、そしてタカハシをすっぽりと包み込み閉じた。

 閉ざされた口からはタカハシの足の先端だけが覗いている。エサを咥えた魔王は、ゆっくりと、下ろした時と同じ速さで頭を上げ、そのまま天井を見上げるように、一息に飲み込んだ。


「ふむ……丸呑みでは少々味気なかったのぉ……」


 お腹をさすり、魔王はご満悦の表情をカメラに向けた。いや、正確には未だ傍観者に徹するロキに、である。


「さて、どうするね? お前の玩具はこのワシが食ろうてしまったぞ? いい加減そんな遠くより眺めておらず、かかってきてはどうじゃ」


「おお、タカハシよ、食べられてしまうとは情けない」


 そんな魔王の挑発など物ともせず、ロキは相変わらずの軽口を呟く。そして、


「しかし、やってしまいましたなぁ」


「む?」


「まぁあるいは脅威の消化力でタカハシが溶けてしまったとしても、復活が出来ない訳ではありませんからなぁ」


「復活出来たらどうだと言うのだっ、何度でも消化して、ワレの腹が膨れるだけの話よっ!」


「とは言え、流石に内蔵まで魔王の強度って訳じゃないと見たのだよ。そしてタカハシの手には、松明に戻った事でその姿を維持しようとする呪われた棒っキレ」


 そう、タカハシの右手に付着した呪いの棒っ切れは、余程明かりを灯せなかったのが無念であったのか、松明の姿を取り戻してからというものの、どれだけ爆風に晒されようと。氷点下の息吹を受けようとも、決して炎を絶やすことは無かった。

 呪われた棒っ切れは、無念の死者の衣服を纏い燃やす事で、そうして呪われた松明へと進化したのである。

 あらゆる強大な呪文でも決して失われる事の無かった炎が、果たして胃液であれば消えるというのか。


 否である。


「ぐぉ……うごおおおおお……があああああああああ!?」


 果たして、魔王は腹を抑え苦しみだした。


 炎や氷を吐くとは言え、魔王のそれは口腔内で錬成した一種の呪文である。火炎氷結耐性は器官には存在しない。それは、あるいは体内より練った炎を吐き出すドラゴンであっても、錬成された炎が消化器官を通って吐き出されるものではなく、完全な無害化とは言い難い。

 つまりどこまで行っても、生命活動を行う限り内蔵は弱点なのである。


「食べた物が悪かったね。寄生虫は怖いんですぞー?」


 ケラケラと、カメラは悶え苦しみ、仕舞いには転げ回り玉座の間を破壊するその姿を映し続けるのだった。







ーーーエピローグーーー






「やぁおめでとう、これでタカハシは立派な勇者ですぞー」


 内蔵を文字通り焼かれ、魔王の最後は呆気ないものであった。最後には灰となり、山と盛られた魔王の遺灰より這い出たタカハシをロキは労った。


 全身真っ黒な消し炭みたいな灰に包まれ、タカハシは数度むせながら、左手を小さく左右に振る。


「言いたい事は山ほどあるが、とりあえず胸を張れる勝ち方でもないわ。というか無いわー、マジ無いわー」


「えー? あの事象勇者に自慢して「ねえどんな気持ち?」ってしつこく尋ねましょうぞー。周囲をスキップで回りながらー」


「すげぇウザいな、それ。

 ――まぁそれも面白そうではあるけど、というか彼らは一体ドコにいるんだ? 随分長いこと俺は死にまくってたケド」


「あー、彼らなら多分最上階でニセモノとやりあってるんじゃないかな、多分」


「ああ、普通そうだよね。上行くよね……まぁ無事だと良いんだけど」


 魔王の魔力が途切れたせいか、周囲に灯る篝火は全て失せ、室内を灯すのはタカハシの持つ、むしろ魔王戦最大功労者である呪われた松明のみである。


「よし、まぁともかく、こういう場合魔王が死ぬと城が崩れるセオリーだし、早いとこ脱出するかっ」


「あれ、合流しないの?」


「余計面倒になりそうだしな。まぁ、ニセモノならきっと勝てるだろ」


「まぁ、多分ねぇ……」


「そして何というか、魔王を図らずも倒してしまった世界にはもうやることは無いと思う訳ですよ」


「なるほどー」


「だから」


「つまり次のステージ、希望の未来にレディ・ゴー! という訳ですなー?」


「え、いや違う……」


「となれば善は急げですな、次はどの世界に参りましょうぞ、うぅむ、悩みますなぁ」


「いやあの、違うくて、もうお家帰りたいんですけど」


「良し決めた! 次はゾンビサイバイバル世界に行くとしましょうぞー!」


「待って話を聞いて嫌だそんな世界」


「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー!」


「嫌ぁあああああああああああああああああああああああ!」


 

 ーー


 こうして、ダイスと魔王ロキの悪意ある選択肢に翻弄されたタカハシの冒険の一節が幕を閉じた。

 その後のこの世界がどうなったかは、面白いことにしか興味のないロキには関知せぬ所であり、カメラの預かり知らぬ世界である。


 次の世界へと旅立ったタカハシは、これからもう暫く、こうやってロキに振り回されながら面白おかしく遊ばれて行くことでしょう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 という訳で駆け足ながら終了っ


 参加頂いたお二方には感謝感謝であります。大方予想の内ではありますが、参加数が居る事前提の代物は難しいものがありますね。


 文字数的に前後編に分けようか悩みましたが諸事情あって駆け足終了と相成ります。

 RIMWorld? さて、知りませんねぇ……(目逸し







 




 


 


 


 




 


 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生勇者をアンコするスレ 和平 心受 @kutinasi3141

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ