純化されていく狂気を、老作家は、彼女は、如何に語るか。

違和感。

まずはそれだろう。
目次の順番が異様だ。
意図された「読みにくさ」が物語への没入を阻むのに、
それでも惹き付けられ、続きを読まずにはいられなかった。

人里離れた山奥に住む老作家は外界との接触を完全に遮断し、
ハウスキーパーの「私」だけが彼の日常に存在を許されている。
「私」の役割は「空気」であり、老作家は「私」を摂取する。
「私」は次第に気付いていく、そして老作家の苦しみを知る。

ピースがつながらないうちは混乱が先立ち、読み進めづらい。
それはあたかも「私」が辞書を頼りに手帳を読み解くかのよう。
すらすらと読めるようになると、もう後戻りはできない。
純化されていく狂気をただ、息を呑んで見つめるだけだ。

血が苦手なら読まないでください。
著者は非常に巧みな書き手です。
本当に迫ってくるから、苦手なら読んではいけません。
ほかの作品を読みましょう。特に純文学好きなら是非。

読了後、最初に戻って確かめたくなる。
数字通りに章をたどってみたくなる。
「私」と共に没頭してみたくなる。
狂気に純化されてみたくなる。


***


余談だが、このレビューを書き始めた瞬間、スマホが震えた。
ビクリとして取り落としかけ、通知の正体を確かめてみたら、
Twitterにて著者が私のアカウントをフォローしたという。
タイミングよすぎて怖かったし!(微妙に予想してたけど)