違和感。
まずはそれだろう。
目次の順番が異様だ。
意図された「読みにくさ」が物語への没入を阻むのに、
それでも惹き付けられ、続きを読まずにはいられなかった。
人里離れた山奥に住む老作家は外界との接触を完全に遮断し、
ハウスキーパーの「私」だけが彼の日常に存在を許されている。
「私」の役割は「空気」であり、老作家は「私」を摂取する。
「私」は次第に気付いていく、そして老作家の苦しみを知る。
ピースがつながらないうちは混乱が先立ち、読み進めづらい。
それはあたかも「私」が辞書を頼りに手帳を読み解くかのよう。
すらすらと読めるようになると、もう後戻りはできない。
純化されていく狂気をただ、息を呑んで見つめるだけだ。
血が苦手なら読まないでください。
著者は非常に巧みな書き手です。
本当に迫ってくるから、苦手なら読んではいけません。
ほかの作品を読みましょう。特に純文学好きなら是非。
読了後、最初に戻って確かめたくなる。
数字通りに章をたどってみたくなる。
「私」と共に没頭してみたくなる。
狂気に純化されてみたくなる。
***
余談だが、このレビューを書き始めた瞬間、スマホが震えた。
ビクリとして取り落としかけ、通知の正体を確かめてみたら、
Twitterにて著者が私のアカウントをフォローしたという。
タイミングよすぎて怖かったし!(微妙に予想してたけど)
「小学生の頃の私は、どうしたら小腸に直接触れることができるかということだけを考えていた」
住み込み家政婦の藤沢が見つけた、老作家の手帳。
外国語で書かれた秘密の手記を、藤沢はひそかに読み進める。
小動物に対する残酷描写があるので、苦手な方は避けたほうがいいです。
何かきっと面白い構成になっているに違いない。
と、見ただけで期待が膨らむ目次。
十四話~と、一話~の二つの時系列で、話が進むのです。
期待に違わぬ展開。
衝撃的な文章で始まる手記の続きも読みたいし。
なぜ彼女が手記を読んでいるのか、そこに至る経過も気になる。
手記を藤沢が読む、その描写をディスプレイ上で読んでいるだけなのに。
じっとりとした湿度と、むせ返るような血の臭いが伝わってくる。
読んでいて、手に汗が滲んできます。
作家と藤沢しかいない館、という閉鎖環境がしみじみ怖い。
やろうと思えば何でもできてしまう。
グロテスク大丈夫な方には、本当にお薦めです。
読了後は、ループして最初から読みたくなります。
十三話の次は、十四話なんですよ……。