泰平の世の前夜、戦国乱世を体現していた男の戦い

 大坂夏の陣で活躍した武将・坂崎直盛が、大坂の陣でどのような活躍をしたか、から、江戸初期のある時までどう生きていたか、までをつづった物語です。

 武人であり武人でしかない男坂崎。
 タイトルに『愚将』とありますが、この男、けして馬鹿ではない。
 しかし、時代の移り変わりの波に乗ることをよしとしない。
 自分の武人としてのプライドを守ることを至上として、けして膝を折らない。
 その生きざまはまさに漢と書いてをとこと読む!
 これが戦国武将の生き残りだ、と思って歓喜に震えながら読み進めさせていただきました。
 すべてのひとが素直に平和を受け入れたわけじゃないんだよな。乱世にしか生きられない人間もいたのだ。
 最後は一周回って逆にすっきりしました。坂崎はおのれを貫いたんだなという印象。

 坂崎の周りを固める登場人物もみんな魅力的です。
 良くも悪くも高貴なお姫様の千姫、真面目でいいやつだった明石全登、猛将真田幸村、憎たらしい悪役の土井、ひょうひょうとして泰然とした柳生、そして誰より情に厚い小野寺……!
 みんなすごくかっこよかったです。

 実に濃密な歴史物語でした。

 あり得ないことではありますが、「もし坂崎と千姫が本当に結婚したら」ifも面白そうだな、とかもちょっと考えたりなど……

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