グルーヴ感あふれた奇想小説

冒頭を読んで「こんな小説かな」と思うと、それはあっさり裏切られます。しかも何度も。トンデモない方向から弾が飛んでくるので、あれよあれよと言う間に作者の術中にハマるでしょう。

どんでん返しの連続……てのとはちょっと違ってて。そう、タランティーノの「パルプフィクション」みたいな感じ。ストーリーもキャラも斜め上にニョキニョキ進むので、着地点はまったく見えません。

ピーキーに振り切ったエキセントリックな悪人ばかり登場するし主人公には厳しい運命が待っているしで、冷静に分析するとけっこう酷い話なんですが、最終話まで読み切ってみると妙に読後感がいい。それは主人公ふたりがイノセントに造形されているためでしょう。

ラストに向けてきれいに話を畳みに入りますが、個人的には前半の「作者の手の上で翻弄される」感覚にやられました。

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