光を見る人間の目で、光すら呑み込むブラックホールを観るために

ブラックホールの美麗コスプレ写真あります。
ドレスをまとった普段の姿はもちろんのこと、
フリルたっぷりゴスロリ風のメイド服から、
透け感が魅惑的なネグリジェまで各種あります。

といった表現は、本文中からの借用であって、私の創作ではない。
本作は科学書でありながら、時にポップな言い回しが差し挟まれ、
あるいは砕けた文体が顔を出すから、初心者にも取っ付きやすい。
気さくな教授の肩肘張らないサイエンスカフェ、といった印象だ。

ブラックホールとはどんな天体なのか。
そんな初歩の初歩から解説が始まる。
真っ暗なはずのBHがなぜ観測可能なのか。
BHにはどんな種類があると考えられるのか。

ところで、BHの研究者が皆、話上手なのはなぜなんだろう?
私の友人に超巨大BHの研究者が数人いるが、揃って面白い。
典型的なBHの作り方を尋ねたら、答えて曰く、
「太陽10個ぶん以上のデブな星をぐしゃっとしたら作れるで」

「ぐしゃっとしたら何でもBHになる」と言われたから、
「じゃあ地球も潰したらBHになるのか」と質問したら、
「理論的には豆粒サイズのBHになれるよ」と言われた。
太陽質量とかギガイヤーとか、用語がいちいち素敵すぎる。

話が逸れてしまったが、とにかくBHはワクワクする。
カクヨムのSFでBHが登場する作品を何作か読んだが、
そうした作品を書いている作家陣には本作を薦めたい。
専門家による言い回しや表現は創作の参考になると思う。

本作では、世に知られていない学術界の様相が垣間見える。
例えば、学術論文が科学雑誌に掲載されるシステムだとか、
オンリーワン且つナンバーワンを争うシビアさだとか、
研究費の配分だとか、科学書の出版に関する裏事情だとか。

カクヨムではイラストが掲載されない仕様だから、
作中のリンクからブラウザを4つも5つも開いて、
美しい図版を並べて眺めながら、興味深く読了した。
小さな天体より大きな天体の話のほうがやっぱり好きだ。

2017年のノーベル物理学賞は重力波だろう、と耳にする。
太陽30個ぶんのBH同士が衝突した際の重力波が観測された件。
10月にお祭り騒ぎになる前に、BHの予習などいかがだろう?
宇宙に描かれる壮大な「絵」に、ぜひ心惹かれていただきたい。