光を見る人間の目で、光すら呑み込むブラックホールを観るために
- ★★★ Excellent!!!
ブラックホールの美麗コスプレ写真あります。
ドレスをまとった普段の姿はもちろんのこと、
フリルたっぷりゴスロリ風のメイド服から、
透け感が魅惑的なネグリジェまで各種あります。
といった表現は、本文中からの借用であって、私の創作ではない。
本作は科学書でありながら、時にポップな言い回しが差し挟まれ、
あるいは砕けた文体が顔を出すから、初心者にも取っ付きやすい。
気さくな教授の肩肘張らないサイエンスカフェ、といった印象だ。
ブラックホールとはどんな天体なのか。
そんな初歩の初歩から解説が始まる。
真っ暗なはずのBHがなぜ観測可能なのか。
BHにはどんな種類があると考えられるのか。
ところで、BHの研究者が皆、話上手なのはなぜなんだろう?
私の友人に超巨大BHの研究者が数人いるが、揃って面白い。
典型的なBHの作り方を尋ねたら、答えて曰く、
「太陽10個ぶん以上のデブな星をぐしゃっとしたら作れるで」
「ぐしゃっとしたら何でもBHになる」と言われたから、
「じゃあ地球も潰したらBHになるのか」と質問したら、
「理論的には豆粒サイズのBHになれるよ」と言われた。
太陽質量とかギガイヤーとか、用語がいちいち素敵すぎる。
話が逸れてしまったが、とにかくBHはワクワクする。
カクヨムのSFでBHが登場する作品を何作か読んだが、
そうした作品を書いている作家陣には本作を薦めたい。
専門家による言い回しや表現は創作の参考になると思う。
本作では、世に知られていない学術界の様相が垣間見える。
例えば、学術論文が科学雑誌に掲載されるシステムだとか、
オンリーワン且つナンバーワンを争うシビアさだとか、
研究費の配分だとか、科学書の出版に関する裏事情だとか。
カクヨムではイラストが掲載されない仕様だから、
作中のリンクからブラウザを4つも5つも開いて、
美しい図版を並べて眺めながら、興味深く読了した。
小さな天体より大きな天体の話のほうがやっぱり好きだ。
2017年のノーベル物理学賞は重力波だろう、と耳にする。
太陽30個ぶんのBH同士が衝突した際の重力波が観測された件。
10月にお祭り騒ぎになる前に、BHの予習などいかがだろう?
宇宙に描かれる壮大な「絵」に、ぜひ心惹かれていただきたい。