想起と表出と発声言語と文字

「芸術の内容も形式も、表現せられた芸術(作品)そのもののなかにしか存在しないし設定されない。そして、これを表現したものは、じっさいの人間だ。それは、さまざまな生活と、内的形成をもって、ひとつの時代のひとつの社会の土台のなかにいる。」と吉本隆明は記しています。
その作品の意味や価値や美は時間と場所と人で相対的に変化をするのです。この表現された「美」が「文字の霊」なのだと感じます。表現者の想起を背負った文字の霊は自己表出と指示表出を経て作品の中で屍として整列するのです。
この「事」は誰もが理解し日常で実践している「自明の事」ではありますが、はっきりと輪郭を持って認識している人は少ないのでは無いかと思います。そんな当たり前の事だけど、薄ぼんやりとしている事をストーリー仕立てで寝る前にさっくり読める。そんな素敵な作品です。

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