悲劇の女王はやがて、還るべき場所へ、愛する人のもとへ

富豪たちの間では「箱庭」が流行していた。
ガラスケースの中に、自然界を再現するような環境を整え、
そこに生物を閉じ込めて、人間たちは屋敷の中で愛でるのだ。

箱庭で最も高価で人気の素材は、人魚や天使、妖精だった。
箱庭職人アルフレドと、彼が惚れ込んだ妖精ティターニア。
分厚いガラスに阻まれた2人に会話はないが、心は通じ合う。

長い時を経て、愛し合う者たちが初めて結ばれる。
人間と妖精は町でも森でも共に生きていけないから。
悲しく儚い物語は、端正な文体とも相まって、非常に美しい。

その他のおすすめレビュー

馳月基矢さんの他のおすすめレビュー353