コンサルってなんか冒険者みたいじゃないですか

 会社の研修でコンサルタント会社の社長と会う機会があったという知人の話なのですが、その社長に「どんなきっかけでコンサル会社を始めたのですか」と尋ねたところ、「学業を終えて某外資大手コンサル会社に入ったが、あまりの激務に耐えきれず、自分で会社を経営するほうがまだ働き方をコントロールできるだろうと思って」という答えが返ってきたそうです。退社して、さてどんな商売をしようかと考えた時、「自分の専門はコンサルなので、じゃあ特定分野のコンサル業をやってみようか」ということになったのだとか。
 仕事が激務過ぎて社長に転向、ってコンサルとは一体どんな世界なんだ!

 この緊張感マックスの疑問に答えてくれたのが、この作品でした。思っていた以上に深くて、エキサイティングで、やはり凄まじい世界。でも、人間味あふれるコンサル業のお仕事シーンが満載です。

 コンサルが他の業種と決定的に違うのは、「案件ごとに業種の異なる会社がクライアントになり、そのクライアントの内側に入って仕事をしなければならない」という点です。毎回毛色の違うお客さんとは、もちろん長年の付き合いがあるわけでもない。お客さんが展開するビジネスは、コンサル側にとっては、これまで縁もゆかりも事前知識もない業界でしょう。そんな状況下でお客さんの要望に応えなければならないのですから、コンサルはある意味、真っ暗なダンジョンに飛び込む勇者のような立場ともいえるのでは……。
 しかも、この「クライアント」という名のダンジョンには、恐ろしいモンスターがたくさん潜んでいます。古い人事システム、適当なデータ管理、無秩序な業務方針……。これらをやっつけて、お客さんを満足させなければなりません。最後の章のモンスターなんて、最強最悪のラスボスです。どれだけ強烈なラスボスなのかは、ぜひ本作品を実際に読んで確かめていただきたいのですが、このラスボスと似たような「モンスター」に出会ったことのある私は、もう机をバンバンして勇者たる主人公たちにエールを送ってしまいました。

 全編にわたって疲れている勇者たちが、なぜそれでもコンサル業を続けようと思うのか。それはやはり、「仕事を通して様々な会社と出会い、そこで働く人たちと出会い、常に新しい世界を見つめることができる」という冒険感があるからではないでしょうか。
 時には愚痴り、時には誰かを呪いながら、エキサイティングな世界を歩き続ける冒険者たちを心から称えます。あ、でも、どうかご健康にはお気をつけてくださいね。

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