第2話 夢人君、私の彼女になって!!
鳥の
「まだ寒いじゃん」
ぶつくさと呟きながら朝の支度をする。
「まだ寒いですね!」「そうですね〜、昨日全国を駆け巡った春一番が嘘のようです」「えー、本日17日は昨日とは違い、正午から夕方にかけて各所で雨マークが付いていますね…」
そんな話をキャスターたちがしているうちに食事を終えせかせかと学校に向かう。今日は何をしようかな?やりたいことたくさん考えてたら学校に着いた。
学校の授業は面白くないので放課後何をしようかと考える時間に当てる。一昨日見た忍者の映画もいいな。昨日の笑える日常アニメでもいいなぁ。いつもそんなことばかり考えている。でも今日はそんないつもとは違う。決定的に。
「外は雨かぁ〜早く放課後にならないかな…」
机に顔を突っ伏し窓を見ながら呟いた。
鐘が鳴るやいなや軽い足取りで教室を後にする。早速準備をしよう。うわ汚ないなー。埃のせいで喋るのも
「十六夜先輩。いるんですか?」
バレてしまった。なら仕方ない天井板を外し、床に飛び降りる。
「夢人君は本当に勘が鋭いね 」「いえ、十六夜先輩のものすごい視線で気づきました」「ええ!?そんなに見てたの、私」「冗談です。本当は時折天井がギィギィ音を立ててたので気づいたんです」
はあ、良かった。って良くは無いよね。だってバレてるんだし…。少しの落胆の後、君が言った。
「今回の忍者作戦は失敗ですね」「心を読んだの!?」「あはは、一昨日の忍者映画、僕も
本当に驚いた。エスパーなのかと思った。
「そうそう、今日は何しに来たんですか?まさか忍者作戦しに来ただけ…ですか?」
そうだった。忘れてたよ、当初の目的を。クスッと小馬鹿にした微笑が含まれた言葉で思い出した。
「今日は夢人君に手伝ってもらいたいことがあってね」「なんですか」「私の彼女になって!!」「へー、そーですか」「そんなこの世で1番どうでもいいみたいな返事しなくても…。まぁいいや、本当は別件なんだけど」「あ、冗談ですよね。で、別件ってなんですか」
顔をストンと落とし返事をする。その時見えた顔が赤色に見えた。気のせいか。
「それでね、私さ、やりたい事もうほとんど網羅しちゃってね、そろそろ暇しそうだったの。そんな時、夢人君に会ってビビってきたの。つまり意味わかる?」
「1人で出来る事はもうやった。だから2人でしかできない事をやろう。って言ってるんですか?」
一瞬の間を置いてから君が答える。
「本当に流石だね。やっぱり、気に入ったよ」
「お褒めに預かり光栄です。ですが丁重にお断りします」
「えぇ!?なんで?いいじゃん」
ちょっと必死だったかな…。
「冗談です、僕にできる範囲ならいいですよ」
困る私を見ておかしいのか、笑いながら言う。
「君は少しイジワルだね…。ん〜じゃあさ、あれやりたぃ…キャァァ!」
ピカッと光をはなったあとゴロゴロと雷鳴がなる。
「十六夜先輩、雷ダメなんですか?」
「うん」
「意外ですね。ちょっと面白いかも」
雷だけは本当にダメ。昔、小さい頃に家の前の木に雷が落ちてその木が焼け落ちたのを見てから本当無理。私の欠点はあれだけと言っても過言じゃない。それを面白いかもとは、ひどい奴め。
「本当に雷ダメなんですね。大丈夫ですか?」
大丈夫じゃないからこうして教室の1番窓から遠い隅に座っている。でもまぁ、だからこそ心配してくれたのかな。
「にしても、今日の予報では雨としか聞いてないのにな。あ、通り過ぎましたよ雷雲。良かったですね」
その言葉を聞いてなんとか立ち上がる。
「そっか。今日は雨の予報だったんだ」
「十六夜先輩は天気予報とか見ないんですか?」
「いつもは見てるんだけどな。今日は見てないや」
「なんでだったんですか?」
「そう言われるとなんでなんだろう。まぁそんな事よりも!」
少し凄んで言ってみる。さっきのお返しも含めて。
「その十六夜先輩って呼び方やめてよ。十六夜って苗字、仰々しい感じがしてなんとなくイヤなの」
「えぇ、、じゃあなんてよべばいいんですか?」
「名前呼びでいいよ。月先輩ってね。あ!呼び捨てでも可。むしろ推奨します」
「む、無理ですよ!名前呼びしかも呼び捨てとか…それじゃそのままで、先輩って呼びます。いいですね?」
君のつむじあたりの寝ぐせがビクッと真っ直ぐ天に伸びた。頰が朱に染まっている。一見、冷静に見える君も女の子の事を名前で呼べないなんてかわいいところもあるんだなって思い、クスッと笑ってしまう。
「うん、いいよそれで。でもいつか、名前で呼んでね」
「検討します」
その顔にはまだ朱が残っている。
「えー、明日は土曜日、というわけで明日、この場所に来てください!」
どん!と机の上に日時の書かれた地図を置いた。
「どういうわけですか。まぁ明日は特に予定もないのでいいですけど」
先ほどの寝グセはもうゆらゆらしているだけだ。
「そっか。それは良かった。そろそろ下校時刻だし今日はもう帰るよ。それじゃ明日、よろしくね♪」
強く念押しして、笑顔が溢れるのを隠しながら教室をでた。
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