生と死の狭間で赤い目が見つめたのは

 怪奇的とも幻想的ともつかない、不思議で妖しい雰囲気が何とも言えない物語です。
 まず、文体や展開は淡々としているのに、登場人物たちの個性がはっきり見えてくるのがいい。身体の部位の取替えがファッション感覚でされる、人間からすれば物騒な流行で広まるあの世という世界観も、慣れるとなんだか人間臭くて面白いと思ってきました。閻魔様に娘、それも猫みたいに気まぐれでちゃっかりしていて甘え上手なのがいますし。博打打ちなんて怖そうな生業なのに優しさを失くさないおろくには応援したくなりましたが、あの世の面々の違う物語も読みたくなりました。