悪夢の血みどろキラー回転寿司

港河真里

恐怖!寿司が襲ってくる!

店舗シャッターは、装甲車でもなければ破れぬほど堅牢。

凶暴化薬を酢飯に混ぜた張本人は、寿司に占拠された厨房で既に死亡。

生存者は俺と妻と息子、ほか数名。

後は全員、寿司に喰われ死んだ。

血染めの店内に、辛うじて仕留めた寿司の残骸が散乱する。


殺人寿司にルールが無ければとっくに全滅していた。

厨房から出る際は皿に乗ってレーンに並ばなければならない。

レーン上からは客が手に取るまでは動けない。


こちらから手出ししなければ安全だ。

俺と妻は息子を抱きしめ、流れる殺人寿司を睨み続けた。


6時間前。

息子の持った寿司のマグロが、シャリから身をもたげた。

その姿は、獲物を喰らうワニに似ていた。

寿司は、息子の指を噛み千切った。

その瞬間から食物連鎖が逆転し、人間が寿司に喰われる側となる。

寿司は凶暴で貪欲な捕食者であり、一貫で何人も屠る殺戮者だった。


シャッターは電波も遮断し、外部連絡も不能。

俺達の餓死が先か、殺人寿司の鮮度低下が先か。

恐らく、前者だ。

一周して厨房ゾーンに戻った寿司は、自動霧吹き装置で活力を取り戻す。


「おなか……すいた……」


俺も身体中に傷を負い、限界寸前だった。

だから、息子が寿司へ手を伸ばすのに気付かず、止められなかった。

息子は、レーンからタマゴを取り……食べた。


「襲って……こない?そうかDHA!」


DHAを含まぬ寿司は、動くだけの知能がないのだ。

回転寿司にはタマゴ以外にも焼き肉等のネタも多い。

それらを食えば……生き延びられる!


そして、俺達は生き残った。


シャッターに何度も体当たりをして、遂に破ることができた。

外に出ると、既に警官隊が到着していた。


俺は、妻と息子と、顔を見合わせて笑い合った。

そして、黒い風となって跳んだ。

警官達は何が起こったのかも理解できないまま、首を引きちぎられた。

脆弱な人類の時代は終わった。

これからは超人類が地上の支配者となる。

超人類となった俺達は、殺人寿司を従えて街へと向かった。

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悪夢の血みどろキラー回転寿司 港河真里 @homarine

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