ハイカラな孫娘と回転寿司に行った話

黒道蟲太郎

ハイカラな孫娘と回転寿司に行った話

 高校生の孫娘ともっと会話がしたくて、二人で食事に出た。


 数年振りの回転寿司屋。

 入り口で私はいきなり戸惑った。機械を操作せねば列に並べぬというのだ。


「じじ、知らんの? 今時みんな使えるよ」


 孫が画面をタッチすると、整理券が出てきた。

 いやぁ、ハイカラだなぁ。


 席に着き、小皿に醤油を注ごうとしてまた困惑。

 いくら傾けても醤油が出ないのだ。


「じじ、知らんの? 今時みんな知ってるよ」


 孫が醤油さしの頭を押し、醤油を出してくれた。

 いやぁ、ハイカラだなぁ。


「おや、イカが流れんな。店員さんは?」

「じじ、知らんの? 今時簡単だよ」


 孫が席にあるモニターをいじって、イカを注文してくれた。

 いやぁ、ハイカラだなぁ。


 やがて、注文の品が流れてきた。イカと、カレー? 寿司屋で?


「じじ、知らんの? 今時みんな頼むよ」


 孫がそれを美味そうに食べ始める。

 いやぁ、ハイカラだなぁ。


「忘れてた、アレ頼まなきゃ。じじも食べる? ケトフウルフウ」


 けと、え?


「じじ、知らんの? 今時寿司屋の定番だよ」


 孫が注文すると、すぐにそれは届いた。

 シャリの上に、テラリと光る黒緑のネタ。まだ若干蠢いているようにも見える。

 これを食べるのか。いやぁ、ハイカラだなぁ。


「あ、醤油よりルッルイェフソースのが美味しいよ」

「る、え?」

「じじ、知らんの? 今時みんな使うよ」


 醤油さしの隣のビンを、孫は取ってくれた。

 暗く濁った液体。小皿に出しても、魔女の鍋のようにこぽこぽ泡立っている。

 これがソース。いやぁ、ハイカラだなぁ。


 意を決して食べると、口中を針で刺されたようなぎょっとする感覚。


「ね、めっちゃフングルいでしょ?」

「ふ、え?」

「じじ、知らんの? 今時みんな言うよ」


 若者言葉か。いやぁ、ハイカラだなぁ。


「じじは遅れてるなぁ。脳改造しないからじゃない?」


 輝くネオン入れ墨にサイバー義手の孫が、電光サングラスに文字を出して私をからかう。

 いやぁ、ハイカラはいいけど、がしたくて来たんだけどねぇ。

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