恋を失ったバレンタインデー

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（173文字）

優しい旦那と可愛い息子に恵まれて『ママ』はとても幸せ。だから――。
と、誰が見ても『愛』に満ちた家族の中にいるから、個人の、女性としての『恋』を我慢してしまう母親のバレンタインデー話です。

家族という枠組みの中でも『ママ』の役割はとても重要ですが、その役割の大切さ故に自縄自縛になり、己が二の次になってしまうのはやっぱり心のどこかでは複雑に思う……。
バレンタインだけじゃなく、それ以外の何気無い日でも幸せを感じてほしいと思いました。

そんなマミさん（not作者様）の思いを綴った短編、女性が読んでも楽しめますが男の人にも読んでほしいですね！

　家庭に入って子育てをしている主人公。普段は家事に追われているけれど、とっておきの日にはやっぱりトキメキたい。
　大好きな旦那さまからも『ママ』と呼ばれる日常を、たまにはするりと抜け出したい。
　そんな主人公を待ち受けているのは……。

　あったかい気持ちになれるお話です。

結婚して、主婦になって、子供が生まれて、いつしか子供中心の生活になって。愛の溢れた日常になって。
でも、恋をしていた頃に履いていた靴も履かなくなって。
特別な日に「唐揚げ」が食べたいと言う旦那さんがいて。
「愛」はあるけど「恋」はなくて。。

恋をしなくなった「ママ」に贈る温かい素敵なお話です。

旦那さん、素敵です。

キュンキュンする「恋」だってしていたい。

胸にじんわりと灯る「愛」だって感じていたい。

そういう意味では理想の物語。理想の日常。

バレンタインにはスペシャルなディナーとデザートを。
大切な人が大好きなメニューでね。

バレンタインにあげるものはアレだけでないはず。
それぞれにスペシャルバレンタインデーを。

それからバレンタイン以上に甘い日常を。

Happy valentine💕

この短編で切り取られるのはバレンタインデーを前にした一人の女性の心境。ママになっていつの間にやら恋する気持ちが消えてしまって…と、そんな心の機微が丁寧に上手に物語として紡がれています。
当たり前の幸せな日常の中に埋没していく気持ちたち、それはそれで大事だけど、やはり特別な気持ちはやっぱり大事。いつまでも大切にしたい気持ち。それは恋ばかりではなく、いろんな気持ちがあると思うのです。そういう気持ちを忘れずにちゃんと向き合うことの大事さ。
そういう気持ちがあるからこそ、穏やかな日常、幸せな日常の大切さありがたみが分かる、そんなことに気付かせてくれる短編でした。
ぜひぜひ読んでみてください。
とくに…続きを読む

何かを得れば、その分何かを失う。
そう決めつけることはないのかも？——そんなことを思わせてくれる、幸せいっぱいの物語です。
毎日の生活の中で、全てがどんどん変わっていく。
それは仕方ない。今あるもので幸せ。
そう思い込もうとする主人公。手放したくないものを諦めるようなその思いは、とても切なく響きます。
それでも——きっと、諦めてしまうことはないんだ。そんな温かいラストに、たっぷり幸せを味わいました。

ふわりとした読後感の、素敵な作品です。

自分を綺麗に見せるための道具＆恋の必需品――そう考えると「履く必要なし」っていう結論になっちゃう。

でも、「逆もまた真なり」なんていうよね。

「それを履けば」――自分が綺麗になって恋もできちゃう。

いいんじゃない？　
だって、恋の卒業年齢なんて決められてないんだから。

主人公の現在の幸せと、その中に隠れている小さな欲が、非常に分かりやすくリアルに書かれていると思う。
それをしっかりと抑えて生活している主人公は、実に当たり前のことをしているだけかもしれない。でもそれができる人は本当に全うな人間だけだろうし、きっと主人公はこのまま「靴」を封印したままでも問題なく生活を続けるだろう。

だけどだからこそ、この作品は夫婦とか長いカップルなんかに読んでほしい。
大丈夫だとしても、やっぱりこの主人公みたいに救われるべき人は沢山居るはずだから