端麗な文章で青春コメディと壮大なファンタジーを融合させた渾身の力作!

この物語の奥深い個性は、この作者様にしか表現することのできない素晴らしいものだと思います。

天貴人と呼ばれる存在を中心に語られる物語は端麗で格調高い表現によって綴られ、登場人物の立ち居振る舞いは優美で艶やかな彩りにあふれ、読み手を美しく壮大なファンタジーの世界へと引き込みます。
けれども、そのファンタジーの世界で読者が最初に着地するのは、なんとも親近感のわく蒼海学園中等部の庭球場。そこに集う新入生八人が純粋に青春を謳歌する爽やかなスポ魂ストーリーに誘われます。

その八人の中で圧倒的な存在感を放つのが本編の主人公・丹布士紅。
それぞれが名家の出身でありながら中学生らしい純朴さをもった仲間の中で、士紅は凄絶すぎる美貌と異質な雰囲気を纏っているのですが、その背景は謎に包まれたまま。部活動の様子と並行して、士紅に関わる人々や垣間見える交友関係などが徐々に明らかにされていきます。

話の流れから、士紅が天貴人であろうことは序盤から推察されるのですが、なぜ天貴人が人界に紛れ込み、人として生活しているのか。天貴人達の存在意義とは何か。人界では今何が起ころうとしているのか。
読み手は士紅という一人の天貴人を通じて、この物語に広がる壮大な世界の危機を感じ取ることになるのです。

作者様の作り込む世界観は圧倒的なスケールかつ細部にわたる緻密な設定で成り立っており、その一端を幕間の楽しいトークで披露してもらえるのも楽しみの一つ。
第二幕では、士紅の背景がかなり明確な輪郭を持って現れるようになってきましたし、幕の最終エピソードでは衝撃の事実が! さらには情趣ある彼らの名前の響きもようやくこの幕の後半で明らかになります。
この壮大なファンタジーに足を踏み入れたからにはここまでは必読ですね!
もっとも、ここまで読んでしまったらもう続きが気になって連載を追うことになるかと思います(^^)

読み応えのあるファンタジーです。皆さまの読書の時間にぜひじっくり楽しんでいただけたらいいなぁと思います。

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