いちたりない、が愛おしい

  • ★★★ Excellent!!!

「死んだ奴は、精々、たまに思い出してやるくらいがちょうどいい」
この言葉に、この物語が抱える情緒があらわれている。
主人公の二人を含め、どの登場人物も人間味にあふれた欠陥をかかえているし、彼らが巡り合う怪談も、どれもすんなりと小綺麗に終わらせてはくれない。
どこかひっかかりを残した薄暗がりの道を、こっそり振り返りつつ歩む、そんな夕暮れの美しさに満ちている。