「死んだ奴は、精々、たまに思い出してやるくらいがちょうどいい」この言葉に、この物語が抱える情緒があらわれている。主人公の二人を含め、どの登場人物も人間味にあふれた欠陥をかかえているし、彼らが巡り合う怪談も、どれもすんなりと小綺麗に終わらせてはくれない。どこかひっかかりを残した薄暗がりの道を、こっそり振り返りつつ歩む、そんな夕暮れの美しさに満ちている。
生きています
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(160文字)
美しくもどこかおどろおどろしい昭和ホラーの空気感がリアルに再現された世界観が見事です。同じ昭和戦前期の作品を書いている者として、勉強になります。今後の展開に期待しております。
怪談として振り切らない隙間を不器用な人情が埋めてくれる。タナトスの誘惑に引きずられつつも、何とかして戻ってこなくちゃならない、そんな世話物。
三流新聞社の冷血記者の関と、彼の旧友であるアル中三文文士の大久保。そんな二人の社会のはみ出し者が、今日も怪異の取材に挑む。あまり人間的によろしいとはいえない二人の軽妙なやり取りと、彼らが挑む…続きを読む
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